英国:GMナタネ・ビートは環境に有害、実験評価報告が不許可を主張か

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.2

 10月2日付のガーディアン紙によると(*)、来週発表される予定の3年間のフィールド実験の結果の評価は、実験された三つの遺伝子組み換え(GM)作物のうちの二つ、油料種子ナタネとシュガービートが通常作物よりも環境に有害で、英国では栽培されるべきでないと報告することになりそうだ。この報告書の内容については内密にされてきたが、同紙が得た情報によると、科学者たちは、これら作物の栽培は植物と昆虫に害を及ぼすと結論することになろうという。ロイヤル・ソサイエティーは、八つの報告書を発表するが、第九番目の要約の発表を拒絶した。しかし、この要約に関係した科学者たちは、他の八つの報告書の発表と同時に、これを自分たちの手で発表する。

 この実験では、GM作物圃場と隣接通常作物圃場の雑草の種類や様々なタイプの蜘蛛、地蜂、蝶、蛾、蜂の数が顕著な違いを見せるかどうか調べられた。すべてに除草剤が使われたが、GM作物については、モンサントとバイエルによる特別なタイプのものが使われた。ロイヤル・ソサイエティーが発表を受け入れた報告書は、GMシュガービートとGM油料種子ナタネでは、雑草と昆虫が著しく減少したことを明かにしているという。モンサントの除草剤・グリフォサートは、ビート畑では大量に散布され、バイエルのグリフォサート・アンモニウムはナタネ畑の多くの種を一掃してしまった。

 トウモロコシについては反対の結果が出た。理由は、トウモロコシ畑では、通常は発芽時に雑草を殺し、バイエルのグリフォサート・アンモニウムよりも強い殺草力をもつアトラジンが散布されるからと見られる。ただ、この結果は、トウモロコシは特に雑草との競争に弱いことから、論議の対象になる。米国農民は、グリフォサート・アンモニウムでは雑草を十分に退治できず、第二の除草剤を使っているから、生物多様性の損傷は一層大きくなる可能性がある。

 政府は二つの作物については許可を拒否し、トウモロコシはGM企業と米国政府に譲歩し、厳格なガイドラインの下で許可することになりそうだという。他のEU諸国も、基本的には条件は同じだから、英国の決定に続きそうだともいう。農業・環境バイテク委員会は、現在、通常作物のGM汚染を0.9%以下、有機作物のGM汚染を0.1%以下に抑えることを目標に、作物間の隔離距離を決めようと検討している。また、バイテク企業は、これ以上の汚染が生じた場合の損害賠償のために基金を立ち上げるべきだという声が支配的になっている。これらはいずれ法律化される。

 安全性と環境影響の評価をクリアしたから、あとは誰が、どこで、どう栽培しようと自由であり、何の「ガイドライン」さえも作ろうしない日本の農水省の態度とは大違いだ。

 なお、害虫を殺すBt作物は実験の対象となっていないが、7月のGM科学レビュー委員会の報告書(GM Science Review First Report)は、例えばオオカバマダラ幼虫への影響に関するカナダ・ゲルフ大学の実験などを考慮しつつ、Bt176以外は無害という実験結果も、長期的影響に関する観察はまったくなされておらず、蝶となった段階でどんな影響があるかは不明とし、環境への影響については一層の研究が必要と結論している。Bt作物が導入されることは当分ありそうもない。

 *GM crops fail key trials amid environment fear;Field trials raise pressure on government

 農業情報研究所(WAPIC)

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