モンサント、トランス脂肪を減らす大豆の開発へ、消費者獲得に本腰

農業情報研究所

03.10.28

 モンサント社は遺伝子組み換え(GM)薬用作物の開発から当面手を引くと先頃発表したが(モンサント、薬用GM作物開発から撤退、欧州事業も縮小へ,03.10.17)、27日、大豆油の不健康な脂肪を減らすことに研究の重点を置くことを明かにした(Monsanto Research Platform Focuses On Reducing Unhealthy Fats In Soybean Oil)。発表によれば、同社は、通常の育種技術とGM技術を適用して、トランス脂肪・飽和脂肪が少ない油を生産する大豆を開発する。

 第一に、通常育種によりリノレン酸が少ない大豆を作る。マーガリンなどを製造する際の水素添加のプロセスが大豆油中のリノレン酸の量を減少させ、天然にはほとんど存在しない異様な構造のトランス脂肪を造り出す。従って、水素添加の必要性を減らす大豆を生産し、食品中のトランス脂肪を減らすのに役立てる。これはフィールドと屋内の両方で実験されており、近い将来の商品化が可能である。

 第二に、通常育種によってオレイン酸を多量に含む大豆を作る。やはり低リノレン酸のこの大豆は、健康に良い一価不飽和脂肪酸のレベルが高い大豆油を生産する。

 これらが商品化されれば、その形質をラウンドアップ・レディー大豆に結合させる。最終的には、GM技術を用いて、トランス脂肪・飽和脂肪がゼロの大豆油の生産を可能にする大豆を開発する。

 この発表は、同社が消費者の便宜に焦点を当てたその他の製品も研究中と強調している。例えば、魚油中に多く、コレステロールを減らし、心臓病や高血圧を抑えると言われるオメガ3脂肪酸を多量に含む植物油を生産することがきる油料作物を研究中という。

 モンサント社の経営展開はGM作物・食品に対する消費者の予想外の反発で行き詰まってきた。今回の発表は、同社が失地回復を目指し、消費者の獲得に本腰を入れ始めたことを示すものであろう。米国食品医薬局(FDA)は今年7月、肥満に警告を発する消費者運動の高まりを受け、心臓病と肥満に結びつくとされる危険なタイプの脂肪(トランス脂肪)の量の表示を食品メーカーに義務付ける(2006年から)方針を明らかにした。モンサント社は、米国消費者の間で高まる肥満防止の声のなかに商機を見出したということだ。

 健康志向を強める消費者がGM食品に対して抱く漠然とした不安は、この戦略によって大きく変化することになるのだろうか。消費者は食品選択のための一層確かな知識と情報を必要とするようになる。