EU規制委員会、Btコーン承認を拒否、論議は閣僚理事会へ

農業情報研究所

03.12.4

 8日朝、EUの食品チェーン常設委員会がシンジェンタ社の遺伝子組み換え(GM)スィートコーン・Bt11の承認を求める欧州委員会の提案を拒絶した。これは、米国・カナダ・アルゼンチンがWTOに提訴しているEUの98年以来の遺伝子組み換え生物(GMO)新規承認の「事実上」のモラトリアム(一時的停止)解除がさらに延期されたことを意味する。

 常設委員会はEU15ヵ国の代表者で構成され、議案は特定多数決(注)で票決される。今回の投票では、スペイン・アイルランド・英国・オランダ・スウェーデン・フィンランドの6ヵ国が承認に賛成しただけで(32票)、特定多数にははるかに及ばなかった。ドイツ、ベルギーと現在のEU議長国であるイタリアが棄権、フランス・オーストリア・ルクセンブルグ・デンマーク・ポルトガル・ギリシャ(29票)が反対に回った。フランスは、今回の規制委員会の投票の直前に出された食品衛生安全庁(AFSSA)の意見(⇒フランス食品衛生安全庁、GMスウィートコーンBt11の承認に待った,03.12.4)に従って反対した。デンマークは新たな表示ルールが実施されるまでは(新たなトレーサビリティー・表示規則が官報に掲載された10月18日から6ヵ月以内、従って来年4月半ばとなる)、新規承認に反対すると言う。

 EUのGMO承認手続に従い、承認の可否の決定はEU15ヵ国の関係閣僚で構成される閣僚理事会の投票(特定多数決)にかけられる。閣僚理事会が3ヵ月以内に決定を下さなければ、欧州委員会が最終的に決定することになる。閣僚理事会の投票となっても、3ヵ月で反対国の事情が大きく変わることはないだろう。これらの国の態度は、基本的には反GMの国民感情に基づくものだ。ドイツやイタリアが賛成に回らない限り、特定多数の賛成は得られない。来夏に予想されるWTOの裁定までにモラトリアムが解けるかどうか、微妙な状況になてってきた。

 ただし、欧州食品安全庁(EFS)は先週、モンサント社のラウンドアップ・レディー・コーン(NK603)が食品・飼料として安全という意見書を出した。シンジェンタ社はこれに希望を見出している。このコーンについては、来年2月ないし3月に規制委員会の投票にかけられる見込みである。欧州委員会は、WTOの裁定が迫るなか、「科学的証拠」を盾に、一段と承認に向けての圧力を強めるだろう。4日に開かれた「リスク・パーセプション(リスクの受け止め方)」に関する会合で、バーン食品安全担当委員は、GM食品の消費は安全という繰り返される「科学的証拠」にもかかわらず、市民の態度は一向に変わる気配がない、このままでは、「集団ノイローゼ」により阻害され・自信を欠き・革新に抵抗し・変化を受け入れたがらない社会につながる「反科学」のアジェンダがヨーロッパ社会に根を張ることになると、苛立ちを顕わにしている。

 (注)EU各国には特定の票数が配分されており(英・仏・独・伊に各10票、スペインに8票、ベルギー・ギリシャ・オランダ・ポルトガルに各5票、スウェーデン・オーストリアに各4票、デンマーク・アイルランド・フィンランドに各3票、ルクセンブルグに2票)、合計87票のうち、62票が特定多数となる。

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