国境を超える遺伝子汚染をどう防ぐか、メキシコは非農業目的GMコーンの研究・導入を禁止

農業情報研究所

04.2.27

 遺伝子組み換え生物(GMO)の国境を超えた移動を規制するカルタヘナ議定書の実施ルールをめぐる国際会合がマレーシア・クアラルンプールで開かれている。食品・飼料として、また加工用に使われるGMOを輸入国に運ぶ際にどのように確認するのか、どれだけのGMOが含まれればGMOを含むと表示するかが議論の焦点である。

 26日付のマレーシア・ニュー・ストレート・タイムズ紙が伝えるところによると、GMOに付される文書をめぐって争いが続いている。米国農務省海外農業局のベバリー・シモンズ局長は、記者会見で、分離・独立した文書を付けるか、通常のインボイス(送り状)とするかでもめていることを明らかにした。彼は、多くの国、中国でさえコマーシャル・インボイスが既に広く使われている文書だと認めており、独立文書は新しいもので、その内容について合意するまでには時間がかかると語ったという。

 米国・カナダ・メキシコは、穀物・油料種子中のGMO輸送のための文書証明の実施に関するガイドラインに合意しているが、グリーンピースや地球の友などのNGOは、議定書が公式に要件を設ける前にメキシコのような途上国に米国が主張する要件を押し付けるものだと批判している。会合で容易な妥協が図られれば、貴重な生物資源の喪失につながる。

 AFPの報道によると(Mexico bans import of some GM corn,2.26)、会合の傍ら、メキシコバイオセーフティー委員会委員長は、薬品やプラスチックなどを生産する非農業目的で操作されたコーン品種のいかなる研究または導入も禁止すると語った。メキシコで食用に栽培されるコーンの遺伝子汚染を防ぐために、禁止はすぐに発効するという。メキシコは世界のコーンの原産地だ。コーンは、メキシコだけでなく、アフリカなど多くの途上国の人々の主要食料となっている。地球温暖化などに伴う大災害でこの食料資源が壊滅的打撃を受けたとき、復活のための最後の拠り所となるのがメキシコ高地の原生種コーンだ。それが、既に米国産GMコーンによる広範な遺伝子汚染を受けている。こうした資源の保全は、カルタヘナ議定書がどう実施されるかにかかっている。

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