中国、GM5品種輸入承認へ、GM作物栽培には慎重な姿勢

農業情報研究所

04.4.2

 中国政府が米国の遺伝子組み換え(GM)製品5品種の輸入のための最終的安全証明書を出した。安全証明が出たにのは大豆1品種、コーン2品種、ワタ2種で、すべてモンサント社の製品である。モンサント社は7品種の承認を求めていた。この最終承認前、GM製品輸入は2002年に農業部が出したGM農業製品安全管理暫定規則に従っており、これは、加工用に中国に輸出されるすべてのGM農業製品について、農業部及び品質監視・検査・検疫局からの暫定認証を要求するものだった。輸出業者は、輸出の2ヵ月前、サンプル、可食性と栄養的品質を評価した技術文書、安全性に関する検証報告を添えて申請せねばならなかった。この暫定規則が4月21日に切れ、このとき暫定証明書は無効になる。これを前にして決着が図られたわけだ。

 この最終承認をめぐる事情を9日付のSoyatech Newsが伝えている。中国のGMをめぐる状況を知る上で有益と思われるので紹介しておきたい。

 まず、この最終承認をめぐっては、一部中国国内メディアは03年に1,300億ドルに達した対米貿易黒字の削減を狙った妥協だと主張している。だが、農業部所管の研究開発センター所長はこれを否定、真に承認に駆り立てたのは大豆に対する国内需要だと言う。

 畜産の急速な発展で中国の飼料としての大豆ケーキの需要は急増している。人々の生活水準向上で植物油の需要も増大している。中国の大豆輸入は99年の400万dから03年には2千47万dに急増した。中国中央テレビのニューヨーク通信員によると、中国は米国大豆の最大の輸入国で、米国大豆収入の15%に寄与している。大豆を輸入しなければ油を輸入せねばならず、加工の利益を諦めねばならない。他方、大豆を輸入しようとすれば、大豆の国際貿易ではGM大豆がすべての取引の90%を占め、ほとんどすべて米国、ブラジル、アルゼンチンから来る。ほかに選択肢はないというのである。それでも、最終承認までに、モンサントは2年待たねばならなかった。一粒のGM大豆も畑に播かれないとは誰も保証できない。農業部はGM製品の環境影響を調査するためのフィールド実験を実施、GM汚染のチャンスはほとんどゼロであると確認したという。

 ただ、グリーンピースは野生または通常の作物大豆との交雑の可能性は否定できないと言う。中国農業科学アカデミーの上級研究者で、世界大豆協会の会員でもあるQiu Lijuan氏は、進行中の実験でその可能性を示している。野生大豆が除草剤耐性遺伝子を生産、「スーパー雑草」の新種を生む一方、野生大豆の遺伝子を利用する植物科学者が大豆新品種を育成するのが不可能になる恐れがあると言う。中国農業科学アカデミーの作物科学研究所のYang Qingwen氏は、だから中国は野生大豆、稲、その他の植物が育つ場所でのGM作物の栽培を禁止しているのだと言う。

 ただ、同氏は、中国の巨大な人口を養わねばならず、外国企業は技術移転をためらうから、GM作物の研究と開発に資金を投入しなければならないとも言う。現在の5ヵ年計画(01-05年)で、農業バイテクに過去5年の5倍の資金が投入され、05年末には5億ドルになる。

 農業部の数字では、現在の中国におけるGM作物栽培面積は280万haだが、1億2千600万haの農地のほんの僅かな部分を占めるに過ぎない。環境保護局バイオセーフティー部副部長のXue Dayuan氏は、中国政府はGM作物の環境への導入に慎重で、厳格に規制していると言う。現在までに、六つのタイプのGM作物、大部分はワタの59品種の屋外栽培が承認されているが、米、大豆のような基礎食料作物では一つも認められていない。

 消費者は知る権利に目覚めており、グリーンピースが孫文大学に委嘱した南部都市の1,000人に対する調査では、大部分がGM成分を含まない食品を望み、87%が表示を望んでいる。半数はGMフリーの製品に高い価格を払うと答えた。消費者の安全性への関心は、GM成分を含むチョコレート・ドリンクを非表示で販売したとネスレ上海を一消費者が訴えた訴訟以来、劇的に高まったという。Sina.comが行った5,000人のオンライン世論調査では、99%がネスレは明確に表示すべきだと答えた。一部消費者は、ヨーロッパと中国でのネスレの二重基準に抗議、ネスレ製品のボイコットに動いた。

 中国が食用GM作物の栽培に動くのは当分先のことかもしれない。だが、巨大な中国の胃袋が外国で栽培されるGM作物を飲み込み始めた。中国は世界のGM農業の強力な支えとなるだろう。米国、ブラジル、アルゼンチンのGM大豆農民は、またモンサントも、しばらくの安寧を得そうである。

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