南部アフリカ開発共同体(SADC)、GM食糧援助ガイドライン承認

農業情報研究所

04.5.17

 ザンビアからの報道によると(SADC Sets Guidelines for Gm Food,The Times of Zambia (Ndola)(Ndola),5.14)、南部アフリカ開発共同体(SADC*)が農業・食糧安全保障に関するサミットで、遺伝子組み換え(GM)食品を含む食糧援助の取り扱いに関するガイドラインを承認した。昨年作られたバイオテクノロジーとバイオセーフティーに関する諮問委員会の勧告に従ったものという。

 ガイドラインは、SADC加盟国が食糧援助を地域内で調達するように勧告している。地域は、国境を安全にかつ迅速に超えるためのGM食糧援助の調和的な通過情報及び管理システムを開発し、採用すべきだという。その他、GMOを含む食糧援助は明確に確認され、国内法に従って表示されるべきだという勧告も承認した。また、SADC技術委員会は、GMO食糧援助を提供する国は、カルタヘナ議定書第8条に従い、事前の十分な説明に基づく同意(インフォームドコンセント)の原則と通報要件を満たさねばならないと勧告している。GMOを含む穀物または繁殖用植物体にかかわる援助食糧は、製粉されるか、不稔化されねばならない。域内で現在GM食糧を商用生産しているのは南アフリカだけであり、このような食糧援助を提供する可能性がある域内国は、当面は南アフリカ一国となるだろう。

 しかし、南部アフリカ諸国への食糧援助は、域内からの調達だけで済まないだろう。実際、食糧援助の大部分は米国による米国産食糧による援助である。一昨年来、GM・非GMが分別されない米国産トウモロコシの援助はザンビアが拒否、他の国は製粉を条件にのみ受け入れてきた。これは米国や国連援助機関との激しい軋轢を生んでいる。このガイドラインがこのような場合にも適用されるのかどうかは定かでない。また、米国がこのようなガイドラインに従うだろうか。

 WTO農業交渉を前進させるために米国等の別の形態の輸出補助の廃止を条件に輸出補助金を全廃する用意があるという最近のEUの提案に応え、ゼーリック米国通商代表は、輸出信用とともに、過剰生産農産物の処理を目的として行われてきた食糧援助の輸出補助的要素を減らすと言明しているが、具体策は明らかにしていない。他の国と同様、資金を提供してできるかぎり被援助国近隣から調達するように切り替える用意があるとはとても想像できない。米国農業者も議会も、そんな提案は認めないだろう。かといって、自国産食糧援助に際して、SADC域内GM食糧援助に課される条件を飲むこともないだろう。米国はアフリカへのGM技術・製品の売り込みに躍起になっており、GM食糧援助はそのための一手段なのだから、そのまま飲み込ませねば意味がない。

 折りしも13日、米国食糧援助をめぐる問題に関する国連食糧農業機関(FAO)への米国大使のトニー・ホールが下院農業委員会で途上国にとってのバイテクの重要性を強調、「我々はEUのバイテク製品モラトリアムが一部アフリカ途上国の米国食糧援助拒否にいかに影響を与えたかを見た。農業バイテクの政治化は終わりにせねばならない」と述べた(House Agriculture Committee Hears from U.S. Ambassador to the United Nations Food and Agriculture Agencies on U.S Food Aid,grainnet,5.14)。GM食糧援助をめぐる軋轢は相変わらず続くだろう。

 *SADC:加盟国はアンゴラ、ボツワナ、レソト、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、スワジランド、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ、南アフリカ、モーリシャス、セイシェル、コンゴ民主共和国。1992年8月設立。20009に自由貿易協定を実施。

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