米国、ブルキナ・ファソでGM作物売り込みの西アフリカ会議

農業情報研究所

04.6.22

 AFP等の報道(*)によると、西アフリカ・ブルキナ・ファソで、米国政府の後援で、遺伝子組み換え(GM)種子を売り込むための3日間の会合が開かれる。地域の大部分の国は、なお人々の健康や環境へのあり得る影響を恐れているが、ブルキナ・ファソは昨年、一定地域でのGMワタ栽培栽培を許可、GM作物実験を受け入れた最初の国となった。

 同国の農業大臣・サリフ・ディアロは、「バイオテクノロジーの前進に加わらないのは記念碑的な間違いだ」、「世界の綿花市場の半分はGM綿花だ。アフリカは、手をこまねいて後塵を拝してはならない」と鼻息が荒い。

 会合には、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の15のすべての加盟国から、4人の国家元首を含む300人から400人の代表が招かれているという。情報ギャップを埋め、バイオテクノロジー、特にGM技術をめぐる「先入観」と闘うために、米国政府の要請基づき、ブルキナ・ファソ政府が会合を組織した。

 ブルキナ・ファソは、国の作物の半分を毎年破壊すると言われる綿実蛾幼虫を殺すモンサント社のBtワタの実験を受け入れた(⇒ブルキナ・ファソ:GMワタ利用を真剣に考慮,03.7)。大規模商用栽培を許可するかどうか決めるまでに数年かかると予想されるこの実験は、このGM種子が国の乾燥気候に耐えられるかどうかを確かめることを目的としている。農相は、年々の50万トンをはるかに超える200万トンを生産できるようになると言う。

 しかし、著名なGM農業反対運動家のファーザー・モーリス・ウデットは、ブルキナ・ファソ農民は、GM作物の栽培によって外部依存を一層強める一方、それによって得られる利益は不確実だ警告する。GM種子は非常に高価な上に、雨が降らなかったら農民はどうすることもできないというのである。

 また、グリーンピースの専門家・エリック・ゴールは、モンサントは一回限りで使用できる種子を販売する恐れがあり、現在農民が行っているような前年の生産から貯えられた種子を利用できず、毎年購入しなければならなくだろうと言う。

 それにしても、4倍にも増える生産をどこに売り捌くつもりなのか。ブルキナ・ファソの綿花は、国の所得の60%を稼ぎ出し、400万人の雇用を生み出す。だが、現在の生産でも世界市場における価格低迷から来る苦境に喘いでいる。米国の綿花補助金が世界価格を押し下げ、国の中枢産業を危機に陥れていると、その廃止と損害賠償を求めてカンクンWTO会合を崩壊に追いやった主役が、この国を含む西アフリカ4ヵ国であった。

 ブラジルのWTO提を受けたWTO紛争処理委員会は、輸出信用の補助金的要素も含む米国綿花補助金が世界市場価格を圧迫しており、WTO協定違反であるという裁定を下した。まだ当事国に伝えられたばかりで、裁定の詳しい内容は8月まで分からない。だが、米国は完全に合法とし、専ら法的問題が論議される上級委員会に上訴する構えを見せている。ディアロ農相は、「危険」は豊かな国が与える補助金だではなく、我々の生産量の低さにも結びついていると言うが、この状況で生産量を増やしても、「危険」は解消されるどころか、ますます高まる恐れさえある。

 そのなかでGM作物導入に走るブルキナ・ファソの行動は不可解というほかないし、それを売り込む米国政府やモンサントは、ブルキナ・ファソの将来などどうでもよく、自国・自社の利益しか考えていないというほかない。GM作物の導入など考える前に、解決しなければならない根本的問題がある。貧しい人々と環境をすべて踏み潰すアグリビジネスと米国政府の驀進をどう食い止めるのかということだ。

 *US pushes transgenic crops in Africa,AFP,6.20En attendant le coton transgénique, le Burkina va accroître sa production,Agrisalon,6.1

 参考:米国農務省の関連発表
 USDA And African Agricultural Technology Foundation Sign Agreement To Share Technologies(6.21)
 Transcript of Video Remarks by Agriculture Secretary Ann M. Veneman to the Burkina Faso Ministerial Conference on Science and TechnologyJune 21, 2004 - Ougadougou, Burkina Faso(6.21)