鹿島港周辺でセイヨウナタネが生育、3分の1はGMO―農水省調査が確認

農業情報研究所

04.6.30

 農水省の調査により、鹿島港周辺の多数の地点でセイヨウナタネが自生しており、その3分の1ほどが遺伝子組み換え体(GMO)であることが確認された。調査結果は、農水省ホームページで29日付で発表された(原材料用輸入セイヨウナタネのこぼれ落ち実態調査)。原料用として輸入された搾油用種子がこぼれ落ちて広がったと見られる。以前から恐れられていたことだが、それが現実に確認されたことになる。

 調査は、「主要」輸入港とされる鹿島港の陸揚げ地点を中心とする半径5kmの範囲でのみ行われたものだが、種子は搾油工場への輸送過程でも飛散する恐れがあるし、搾油工場周辺にも自生は広がっているかもしれない。また、輸入港も鹿島とは限らない。例えば、平成15年、鹿島港から輸入された搾油用ナタネは21万3000トンほどだが、横浜港から輸入されたのは36万トンと鹿島をはるかに上回る。輸入港周辺、搾油工場までの道路沿い、搾油工場周辺、自生は全国至るところに広がっている可能性がある。

 ナタネは他家受粉植物で、近縁の野菜類や野生種と容易に交雑する。しかも、その花粉は風や昆虫により、数キロも運ばれることが多くの研究で確認されている。とすると、既に全国至るところで、このような交雑種が生じている可能性もあるわけだ。日本では現在、GMナタネは栽培されていない。しかし、食用油の原料として輸入するだけでも、既に広範なGM汚染が生じているかもしれないのだ。

 EUの専門家規制委員会は、最近、モンサント社の除草剤耐性油料種子ナタネ(GT73)の輸入の承認に失敗した。いずれ欧州委員会が承認することになるだろうが、この承認に反対した国々の反対理由の一つが、モンサント社は、輸入されたこのナタネの種子が環境中に逃げ出し(例えば輸送中にこぼれて)、野生化する可能性に関して満足な説明ができなかったということだった(⇒EU規制委員会、またもGMO承認に失敗 モンサント社の油料種子ナタネ,06.6.16)。ヨーロッパの国々が抱いた恐れが、日本で現実のものとなったわけだ。あるいは、これは欧州委員会の決定にまで影響を及ぼすかもしれない。

 農水省の調査の目的や調査方法、調査結果の詳細は、そのホームページを参照されたい。農水省は、この調査結果から次のように結論する。

 @「原材料用として輸入されたセイヨウナタネがこぼれ落ちにより環境中へ逸出したことが確認された」、

 A「環境中に逸出した原材料用輸入セイヨウナタネが世代交代している可能性が示唆されたが、一方、新たなこぼれ落ちによる種子供給があることも考えられ、セイヨウナタネが世代交代しているかどうかは確定できなかった」、

 B「遺伝子組換え作物を原材料用として輸入する場合についても、これまで同様、我が国の環境中で生育した場合の特性を把握した上で生物多様性影響を評価することとしたことは適切であると確認された」。 

 この調査は、Bに言うGM作物の原材料用の輸入の「生物多様性影響評価のあり方の検討に資する」ために行われたものだ。調査の結果、「組換えナタネが環境中で生育していることが確認されましたが、この組換えナタネは、「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」に基づき、環境中への逸出により生育する可能性を想定した安全性の確認が行われ、食品・飼料としての安全性も確認されている組換えナタネの系統に属するものです。また、カルタヘナ法上も経過措置が適用され、使用が認められているものです」(この調査結果を発表するプレスリリース本文、下線部は後に加筆訂正された部分⇒原材料用輸入セイヨウナタネのこぼれ落ち実態調査についての訂正について)ということになった。

 要するに、種がこぼれ落ちて自生しようが、それが世代交代を重ねていようがいまいが、環境への悪影響もなければ、食品・飼料としての安全性にも問題はないと言うわけだ。自生ナタネの処分も、それから生じる二次汚染対策も、まったく必要ないということだ。

 だが、近縁作物がGM汚染を受ける農家は一体どうなるのか。農水省は、生産物が売れなくなろうが、「菜の花街道」が評判を落とそうが、カナダのシュマイザーさんのように寝耳に水の特許料を請求されようが、一向に構わないということのようだ。各地で進む「GMフリー地域」創設の動きは無駄なことであることがはっきりした。GM作物栽培を締め出したところで、大量のGMOが輸入され、流通するかぎり、GM遺伝子の侵入はどこでも防げない。