EU規制委員会、またもGMO承認に失敗 モンサント社の油料種子ナタネ

農業情報研究所

04.617

 EU各国の専門家で構成される規制委員会が16日、モンサント社の遺伝子組み換え(GM)食品−除草剤耐性油料種子ナタネ、GT73−の輸入の承認に失敗した。欧州委員会は、GMスウィートコーンの輸入・販売承認を自ら決定、GMO新規承認のモラトリアムを解除したばかりだが、またもや同様のプロセスを辿ることになると予想される。欧州委員会は、改めて承認案を決定機関である閣僚理事会に提出するが、スウィートコーンの場合と同様、3ヵ月以内に理事会が賛否どちらかを決定できなければ(否決されれば手続はそこで終わる)、再び欧州委員会の決定に委ねられる。

 今回の規制委員会には、5月1日に新たにEUに加盟した10ヵ国が初めて参加した。従って、これら諸国がどのような意志を示すか注目されたが、承認に賛成したのはチェコ、ラトビア、スロバキア、反対したのはキプロス、エストニア、ハンガリー、マルタ、リトアニア、ポーランドで、反対が多数となった。人口などに応じて票数を割り振られた各国の投票による特定多数決で決定されるが、承認賛成は上記3ヵ国とベルギー、フィンランド、フランス、オランダ、ポルトガル、スウェーデンで計43表、反対は上記6ヵ国にオーストリア、デンマーク、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、英国で計57票、棄権24票(ドイツ、アイルランド、スペイン、スロベニア)となり、承認も、否決も決定できなかった。

 スウィートコーン承認に反対したフランスが賛成にまわり、賛成した英国が反対にまわるという大きな変化があったが、これはそれぞれの国のリスク評価機関の意見を反映するものだ。

 「地球の友」によれば、公開されなかったモンサント社のラット飼育実験では、肝臓重量が15%増加していた。通常はGM推進派の英国の政府科学アドバイザ−は、ここに観察されたあり得る悪影響の満足な説明を要求した。また、モンサント社は、輸入されたこのナタネの種子が環境中に逃げ出し(例えば輸送中にこぼれて)、野生化する可能性に関して、いくつかの政府を満足させられなかった。英国当局は、適切なモニタリング計画と、これが起きた場合の緊急対応計画を作成するように、繰り返しモンサントに求めたという。

 これらの問題にモンサントが答えないかぎり、閣僚理事会も同様な結果になるだろう。

 ニュース・ソース
 Friends of the Earth,"New Europe" blocks U.S. food import(6.16)
 EU deadlocks on genetically-modified oilseed rape,AFP,6.16

 関連情報
 EUのGMO新規承認モラトリアム解除とGMOをめぐる欧州の状況(上),04.5.28

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