モンサント株主、投資リスク透明化のためにGM製品の独立影響評価を要求

農業情報研究所(WAPIC)

05.1.25

 1月20日に開かれたモンサント社の株主会合で、会社に遺伝子組み換え(GM)製品の影響に関する報告を求める決議案(http://www.proxyinformation.com/monRES.html)が提出された。モンサントは近年、多数の政府(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、南アフリカ、コロンビア)に対するGM小麦の許可申請の取り下げ(04年7月)、GMコーンによる薬剤生産の放棄(03年10月)、オーストラリアでのラウンドアップ・レディー・カノーラ・プログラムの中断などの重大な戦略転換に追い込まれた。これらGM製品の安全性や市場性が不確実なためである。投資家は予期しないリスクを負うことがないように、会社はGM製品のリスクを適切に評価せよと言う。

 さすがに否決されたが、適切な安全性評価をさぼりつづけると、バイテク企業は株主からさえ見放される時代が近づいているのだろうか。この決議案(報告)は次のようなものだ。

 株主は、役員会の独立委員会がGM製品監視のための会社の政策と手続を検証し、その結果について6ヵ月以内の会合で株主に報告することを要求する。この検証の対象には次のことが含まれる。

 1)会社のGM製品の範囲、

 2)会社が販売または製造するGM製品の継続使用の環境影響、

 3)必要な場合に生態系からGM種子やその他のGM製品を除去するための緊急事態計画、

 4)GM作物・生物・製品が人間・動物・環境に安全であることを示す独立の長期的安全性試験の証拠。

 この要求の根拠として、全米科学アカデミー(NAS)、憂慮する科学者同盟(UCS)等の最近の報告から次のような指摘を引用する。

 ・「食品用に生物遺伝子改変することから生じる組成の変化の確認、そのような変化の人間の健康に対する生物的関連性の決定、人間の健康への意図したものではない悪影響を予測し・評価する適切な科学的方法の考案の能力には大きな欠陥が残されている」(NASSafety of Genetically Engineered Foods: Approaches to Assessing Unintended Health Effects,04.7,p.15)。

 ・「病害虫抵抗性を与え、あるいは別の仕方で作物を改良する一部組み換え遺伝子が、特に既に雑草とみなされている生物に逸出するならば、近縁野生種における雑草性(Weediness)増強の進化に貢献することが起こり得る」・・・「遺伝子改変生物に関する別の懸念には、非標的生物群ー人間も含むーへの影響と、改変遺伝子の諸地域・諸国への拡散の可能性が含まれる」(NASBiological Confinement of Genetically Engineered Organisms,04.1,p.3-4)。

 ・UCSの研究(Gone to Seed,04.3)は、「遺伝子操作DNAが米国の伝統的コーン・大豆・カノーラの種子を汚染しており、もしチェックなしに放置されれば、農業貿易を阻害し、有機食品産業に不公正な負担をかけ、有害物質が食料供給に入り込むのを許すことを発見した」。

 さらに、EUのルールは食品・飼料成分のトレーサビリティーと、0.9%以上のGM成分を含む食品の表示を要求しており、ドイツ、イギリス、その他の保険会社は、GM作物の長期的安全性にかかわる保険などは拒否していると付け加える。

 なお、これに関連するイシュー・ブリーフ(http://www.proxyinformation.com/monissue.html)は、検証すべきとされた諸点について次のように言う。

 ・研究は、モンサントの主要製品であるラウンドアップ/グリホサートへの抵抗性の増加を示している。

 ・10大学の雑草科学者が04年12月、2000年以来、デラウエアでたった一件報告されたにすぎなかったラウンドアップ抵抗性ヒメムカシヨモギ(ホースウィード)が11州で報告されるまでに増え、テネシーだけでも150万エーカー(60万ha)にはびこっていると報告した。

 ・競争企業は組み換えDNAを利用しない除草剤耐性やその他の作物を開発しつつあり、市場と市民の反対を回避しているように見える。このような新たな技術はモンサントのGMインフラストラクチャーの価値を信頼できないものにする。

 ・マーカーにアシストされた育種は、市場の障害がなしで、干ばつ抵抗性などのGM技術の目標の多くを達成できる。

 ・突然変異誘発法で除草剤耐性やその他の作物を創出できる。二つの会社がラウンドアップ・レディー作物に挑戦できる新たな作物を開発しつつある。

 ・モンサントのGM作物による汚染の広がりを示す証拠はNAS、米国環境保護庁(EPA)、UCSなどによる発見で積み上がっているが、規制当局は汚染除去の緊急事態計画開発にも、金銭補償にも責任を負わず、スターリンク事件やプロデジーン事件で企業は多大のコストを負った。

 ・モンサントは、GM作物は規制当局により審査されていると繰り返す。しかし、FDAがしているのは、製品は安全というモンサントの「保証」に基づくGM作物の販売の承認にすぎない。

 ・消費者に保証し、市場の反対に取り組み、投資家に潜在リスクの全体像を提供するためには、これら製品の安全性を確認する独立の試験の証拠が必要である。モンサントの最も一貫した主張の一つは、ラウンドアップは農薬使用を減らすというものだ。しかし、04年の研究:“Genetically Engineered Crops and Pesticide Use in the United States: The First Nine Years"は米国農務省(USDA)のデータを見直し、GMコーン・大豆・ワタに施された農薬の総量は96年(これら作物の商業栽培が始まった)から04年の間に122.4ポンド(4%)増えたことを発見した(⇒農業情報研究所:米国GM作物栽培、農薬削減の証拠なし、除草剤使用は大幅増加)。NASが意図しない悪影響の予想と評価のための科学的方法には大きな欠陥があると認めているのは前記のとおりである。