米国GM作物栽培、農薬削減の証拠なし、除草剤使用は大幅増加

農業情報研究所

04.1.9

 米国の”ノースウエスト科学環境政策センター”が米国の遺伝子組み換え(GM)作物の商用栽培が始まって以来8年間の農薬使用量の変化に関する包括的研究を発表した(http://www.biotech-nfo.net/technicalpaper6.html)。GM作物の採用は除草剤・殺虫剤の使用を減らし、環境保全と食品安全に寄与するというのがバイテク企業・唱導者の年来の主張であるが、このような結果は必ずしも確認されない。

 研究はアイオワ大学や消費者連盟などの委嘱を受けて行われたもので、米国農務省による作物ごと、州ごとの公式データに基づいて行われた。GM作物栽培区域で施用される平均農薬使用量を、対応非GM作物がに施用される量と比較したこの研究によると、商用栽培の最初の3年間(1996-98年)には、GM作物は農薬使用を2,540万ポンド減少させたが、最近3年間(2001-03年)には、GM作物栽培地に施用される農薬は7,300万ポンド増えた。除草剤耐性作物、特に大豆への除草剤使用の大きな増加が、この農薬使用量増加の大きな要因である。

 多くの農民は、雑草が一層防除の難しい種に変わり、同時に一定の雑草に遺伝子抵抗性が出現したために、面積当たりの除草剤使用を増やさなければならなかったという。害虫抵抗性のBtコーン・ワタでは殺虫剤使用量は年々200万ポンドから250万ポンドの減少を続けている。しかし、除草剤使用がこれを上回る勢いで増加しているために、全体としての農薬使用量は大きく増加することになった。

 GM作物導入の農薬使用量への影響については今までにも多くの研究がなされてきたが、農薬、特に殺虫剤の使用量は天候等の環境条件(害虫の発生の程度等)によっても大きく変わるから、必ずしも確度の高い推計はできていない。今回の研究も同様な不確定性を免れないだろうが、その包括性と除草剤に限っての著しい増加という知見は注目される。報告は、最近グリフォサートの特許保護期間が切れ、安価になったことが大きく関係していると推測する。新たな競合製品の価格は半分になり、これが一層の使用を促したという。

 ともあれ、GM作物導入が農薬使用量を大きく減らすという明確な証拠は、この包括的研究によっても得られなかったということだ。

 関連情報
 米国:遺伝子操作作物の採用状況と生産への影響,02.4.19

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