FAO専門家会議 GM作物の環境影響監視ガイドラインを勧告

農業情報研究所(WAPIC)

05.2.2

 国連食糧農業機関(FAO)の専門家会議が先月27日、遺伝子組み換え(GM)作物の環境影響監視(モニタリング)のガイドラインと方法を勧告した(Monitoring the environmental effects of GM crops)。GM作物を世に出そうとするならば、環境放出前のリスク・アセスメントからバイオセーフティーの考慮や放出後監視にいたる技術開発の全過程に責任を負わねばならない。環境にかかわる目標は、土壌・水・生物多様性などの基本的自然資源の維持と保護も包含せねばならない。農業システム・農村の生計・一層広範な生態的健全性を保護するために必要な知識を生み出すには、監視が不可欠になる。この過程には環境保護団体、農業者団体、コミュニティー組織が積極的、継続的にかかわるべきだという。

 この会議はGMをめぐる論争と一般市民の懸念に照らして組織されたもので、FAOは、世界の多くの地域の農業科学者グループに対し、既存GM作物の環境影響監視への最も的確で・科学的に健全なアプローチに関する明確な予備的ガイドラインを提供するように求めたという。この回答を受け、国連環境計画(UNEP)やCGIAR(国際農業研究協議グループ)、国家研究センターとともにこの過程を促進する用意があり、厳格にデザインされた監視プログラムの採択を奨励するという。

 FAOの狙いは、各国がこの問題で情報に基づく自身の選択をするように助けるとともに、農業システムの生産性と生態的健全性を保護することにある。最近は、とりわけ途上国でGM作物の商業栽培が劇的に増加している。従って、GM作物の便益と環境にもたらすかもしれない危険(ハザード)の監視の必要性は、かつてなく高まっているという。

 専門家は、GM作物の環境影響を測定するための指標として利用できるデータは既に大量にあることを認めたという。だから、今後は最も的確な既存データの確認が重要になる。その際、科学者の知見に加え、現場や伝統的な知見も大きな頼りになることに注意した。こうしたことから、この過程にはすべての関係者、農業者、科学者、消費者、官民部門、市民社会の参加が必要になると言う。

 国際専門家会議の勧告とはいえ、「科学的」知見が崇められ、現場や伝統的な知見が「非科学的」、主観的、情緒的、果ては子供じみているとさえ蔑まれる日本では(また米国でも)、こんな過程は決して実現しそうにない。北米環境協力協定に基づく環境協力委員会は、メキシコにおけるGMコーンの環境影響調査に先住民コミュニティーも含む小農民コミュニティーの住民を参加させ、その知見・意見を大いに尊重する報告・勧告を出した。しかし、米国政府は、まさにそのために「非科学的」だとして、その受け入れを拒んでいる(→メキシコのGMトウモロコシの影響、NAFTA環境協力委員会報告書,04.12.17)。