シンジェンタ社研究チーム、βカロチン大量含有の新ゴールデンライス開発

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.28

 シンジェンタ社の研究チームが、最初(2000年)に開発されたゴールデンライス(ゴールデンライス1)に比べてはるかに大量のβカロチン(ビタミンAの前駆物質)を含む”ゴールデンライス2”の開発に成功したと発表した(*)。ゴールデンライスの批判者は、ゴールデンライス1が含むβカロチンの量は少なすぎ、ビタミンA不足からくる盲目に悩む児童を助けるという開発者の主張は実際的ではないと批判してきた。しかし、ドイツ・フライブルク大学でゴールデンライス・プロジェクトを運営する人道的ライスボードのためにこの研究チームを率いたRachel Drakeは、ゴールデンライス2は、控え目に見ても、子供が必要とする分の少なくとも半分を提供すると言い、人道的ライスボードのマネージャーであるJorge Mayerは、勧告されている一日当たり摂取量をすべて提供するに十分なビタミンAを含むかもしれないとさえ言う(New 'golden rice' carries far more vitamin,NewScientist.com,3.27;http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7196)。

 研究チームは、ゴールデンライスの開発に利用された二つの遺伝子のうちの一つ、フィトエン合成酵素(psy)をコード化するスイセン(daffodil )の遺伝子がβカロチンの蓄積を制限すると考えた。他の植物のpsyを洗い出し、蓄積を大きく増加させるトウモロオシ由来のpsyを探し出した。このpsyをゴールデンライス1の開発に利用した土壌細菌・Erwinia uredovoraのカロチン不飽和化酵素(crtI)と組み合わせて導入するゴールデンライス2を開発した。ゴールデンライス1は1グラム当たり1.6マイクログラムのβカロチンを含むだけだったが、ゴールデンライス2はその最大23倍(1グラム当たり最大37マイクログラム)のβカロチンを含むという。

 ただし、批判者は、これによっても消費者が遺伝子組み換え(GM)への反対を和らげることにはならないと見ているようだ。上記のNewScientist.comの記事は、批判者は、人々がこのコメを食べるときに、ビタミンA前駆物質が吸収され、ビタミンAに転換されるとは証明されていないと指摘する。グリーピースの遺伝子操作報道員のChristoph Thenは、「まだ多くの疑問が答えられていない。5年間の研究ののちにも、研究者はどれほどのビタミンA前駆物質が調理後に残るか分かっていない。それに、環境や人間の健康にとってのいかなるリスク・アセスメントも行われてこなかった」と言う。Mayer氏は、βカロチンの摂取の問題は、最初のゴールデンライスを使う人体実験で今年遅くには答えることができると語ったという。

 シンジェンタ社はゴールデンライス2を所有するが、人道的ライスプロジェクトに贈与している。Mayer氏は、インドとフィリピンでゴールデンライスの栽培許可が出たと言っている(農業情報研究所はそのような情報を得ていない)。 

 関連情報:シンジェンタ社、ゴールデンライスを人道委員会に供与,04.10.15

 *Rachel Drake et al,Improving the nutritional value of Golden Rice through increased pro-vitamin A content,Nature Biotechnology,Published online: 27 March 2005; | doi:10.1038/nbt1082(Abstract | Full textPDF (263K) Supplementary Information).