米国一の米バイヤー 薬品生産GM米栽培が許可されればミズーリの米は買わない

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.14

 APの報道によると、米国No.1の米バイヤーであると同時に最大のビール醸造会社であるアンハイザー・ブッシュ社が、もし遺伝子組み換え(GM)薬品生産作物が州内で栽培を許されれば、ミズーリ州から米は買わないと発表した。同社は、薬品を生産できる人間の蛋白質を生成するように遺伝子操作された米を200エーカー(60ha)栽培するというヴェントリア・バイオサイエンス社の計画に懸念を表明した最新の企業になるという(Anheuser-Busch Threatens Mo. Rice Boycott,AP via Yahoo!,3.12:http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&cid=509&ncid=509&e=15&u=/ap/20050412/ap_on_bi_ge/beer_genetic_crops_1)。

 ヴェントリア・バイオサイエンス社は現在、薬品生産GM米の屋外栽培に関する連邦の承認を求めている。他の食品企業、環境団体、農民は、GM米が他の食料作物と交雑し、通常の食物チェーンに外来遺伝子が入り込むかもしれないと言う。先月は、世界最大の精米販売農協であるアーカンソーのライスランド・フーズ社が、顧客はGMライスは望んでいないとして、連邦規制当局にヴェントリアの計画の許可をしないように求めた。アンハイザー・ブッシュ社から農務省(USDA)に先月提出されたコメントによると、同社は、この問題をめぐってボイコットを表明した最初の大企業と思われる。

 同社のジム・ホフマイスター副会長は、「州内での商用米の汚染の可能性を考えれば、ヴェントリアがここで薬品米を導入すれば、ミズーリで生産され、加工される米は買うわけにはいかない」と言う。たた、サクラメントに本拠を置くヴェントリア社のスコット・ディーター会長は、アンハイザー・ブッシュの”完全に無責任な”脅しだ、汚染への怖れが誇張されていると言う。彼は、ヴェントリアの計画は、それ自体自家受粉で、他の作物から地理的に分離された作物で「完全な閉鎖的な生産システム」を利用するものだと説明する。

 ヴェントリアがUSDAに承認を求めているのは、乳蛋白質の一種であるラクトフェリンと鼻粘液や涙液などに存在し・細菌の細胞壁に作用して溶菌を引き起こす酵素・リソチームを生成する合成人間遺伝子で強化されたGM米で、会社は下痢と脱水症を防ぐ医薬品として利用するために収穫・精製することを希望している。

 報道によると、USDAは95年以来、300余りの薬品生産作物の栽培を承認してきたが、大部分はそれぞれ1エーカーに満たない小規模な屋外地所についてであった。USDAの報道官によると、ヴェントリアの申請が承認されると、今までで最大の薬品生産作物栽培となる。今まで、GM作物から作られたいかなる人間用薬品も商業利用を承認されていない。

 この問題は、既にカリフォルニアの米産業を混乱させてきた。カリフォルニアの規制当局は昨年、国際的な顧客が通常栽培作物の購入を拒否するだろうという米生産者の声を受け、ヴェントリアの人間遺伝子を持つ米の商業規模の栽培申請を退けている。1億ドル相当の米を生産する米国第6位の米生産州・ミズーリの南西部の農民も、計画に反対する175人が署名した請願書を州当局に提出した。

 しかし、ミズーリ・ファーム・ビューローは、植物が生産する薬品のための新たなセンターの中心的担い手となるべく、サクラメントから西北ミズーリ州立大学に移転しつつあると最近発表したヴェントリアへの支持を続けているという。

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