国際食糧政策研究所、USDAがアフリカにGM作物を売り込み

農業情報研究所

05.7.15

 アフリカ諸国への遺伝子組み換え(GM)技術の売り込み、その導入を迫る圧力が一段と増しているようだ。昨日はビル・ゲイツ財団が資金を提供する栄養強化ソルガム開発計画が始動したことを報じた(アフリカで栄養強化ソルガム育種プロジェクトが始動 栄養不良改善を目指す,05.4.14)。

 14日には、主導的な国際農業政策団体である国際食糧政策研究所(IFPR)の研究報告(http://www.ifpri.org/pubs/articles/2004/africajbiotech.pdf)が、いくつかの国(エジプト、ケニア、南アフリカ、ジンバブエ)の公的機関のバイテク研究開発が農薬使用削減・干ばつ耐性の強化・主要食糧の栄養強化などを通して環境を改善し、健康を増進し、食品のコストを引き下げ、小農民の所得を増やす可能性を提供しているにもかかわらず、大部分のアフリカ諸国は、国の政策や規制システムがその一般的利用を承認するための安全性要件を処理する準備ができていないために、開発されたGM作物が農民の手に届かないでいると、バイテク作物研究やGM食品への反対を取り下げるように要請した。

 11日には、米国農務省(USDA)の農業研究局(ARS)が、やはりビル・ゲイツ財団が資金を提供する”バイオキャッサバ・プラス”と称する栄養強化キャッサバ開発プロジェクトに参加すると発表し ている(ARS to be Part of New Team Improving Cassava;http://www.ars.usda.gov/is/pr/2005/050711.htm)。キャッサバはアフリカ大陸の人口の40%、2億5000万人の基本食糧で、アフリカで最も重要な作物であると強調する。それは干ばつ条件の下でも生育が容易だが、蛋白質やいくつかのミネラルが少ない。そこで、国際開発チームが亜鉛、鉄、蛋白質、ビタミンAとEの含有量を増やし、かつ長持ちし、ウィルスにも抵抗性を持つキャッサバを開発する5年間のプロジェクトを実施しているが、ARSもこのプロジェクトに加わるということだ。GM作物の売り込みを後押ししようとする意図が透けて見える。

 米国でビタミンAとEを増やしたキャッサバが開発された暁には、アフリカで栽培、アフリカの条件の下で生産と栄養分に関する試験を行う。これで成功した品種は、完成品種に合体するための育種計画に開放するという。

 米国は、世界中で衰えないどころか、ますます高まるGM作物・食品への抵抗を、先ずは差し迫った必要に迫られるアフリカに栄養強化製品を売り込むことで打ち破るという戦略に大きくシフトしているようだ。