ガーナ主要紙上でGM作物論争 農業相のGM食品禁止発言を受けて

農業情報研究所

05.9.3

 先月初め、ガーナの食糧農業相が、GM食品の一切の輸入と栽培を拒否すると語ったことを伝えたが(ガーナ政府 一切のGM食品の輸入・栽培の拒否を決断,05.8.2)、以後、これを報じたガーナの主要紙・Ghanaian Chronicle紙上でこれをめぐる論争が巻き起こっている。一方は、遺伝子組み換え(GM)技術は、国の食糧安全保障と環境保全のためには不可欠で、この技術に乗り遅れてはならないと主張する。他方は、GM作物導入は外国企業を儲けさせるだけ、GM作物がなくても食糧増産は農業方法の改善で可能だし、GM作物の導入により重要な外貨収入源である有機農業が危機にさらされる、GM食品は国に無用だと言う。

 以下に二つの対照的な論調を紹介する。

 ガーナ、GM食品の輸入を停止(by Clement K. Abrokwaa;Ghanaian Chronicle via AllAfrica.com,8.22;http://allafrica.com/stories/200508221289.html)。

  クロニクル紙の記事によると、食糧農業大臣・ Mr. Ernest Debrahが7月29日、新たな技術が国の食糧生産と飢餓の問題の一部の解決に役立つかもしれないという事実にもかかわらず、ガーナは、ためらうことなく、いかなるGM食品・作物・物質の輸入も拒否するとー断固としてー発表した。 この記事が述べたように、”この声明は、政府がGM食品に関係する何事にも反対すると決断したことを意味する”。

 しかし、この記事は、大臣のこのような断固とした拒否の理由に触れていない。また、大臣の決定は、多分、政府部内でも意見の一致をみていない独断的な決定であった かもしれないことにも触れていない。

 CSIR(南アフリカ人間科学研究評議会=Human Sciences Research Council of South Africa )の科学技術政策研究所(STEPRI)が主催したGMOに関する7月28日のワークショップで、CSIRの事務局長・Emmanuel Owusu Bennoah教授は、あらゆる科学技術に必然的に伴うリスクを認めながら、国の食糧安全保障にかかわる農業・食糧生産の改善のために、ガーナがGM技術を利用することを強く推奨した。彼は、ガーナがこの技術に参画するのに失敗すれば、科学技術の新時代に取り残される危険があると述べた。

 同様に、環境科学大臣のMs. Christine Churcherも、GM技術をめぐる論争は認めながらも、それが国の食糧安全保障問題を解決する巨大な潜在能力をもつとして指摘した。彼女は、このワークショップの前日にも、議会環境委員会のメンバーのための 二日にわたる能力建設セミナーに宛て、国の森林とその他の自然資源が急速に減少しつつあることに注意を喚起している。彼女によると、ガーナは既に、過去20年の間に森林面積の75%以上を失っており、環境悪化ー特に違法伐採と鉱業ーを通じて、年に200万セディー[ガーナの通貨単位、100セディー=1円ほど]の損失を蒙っている。

 [自然資源を]いかに救い、失われたものをいかに回復させるかに注意が集まっているときに、食糧農業大臣の発表は驚くべきもので、大きな失望を招くものだ。我々は、このような かけがえのない自然資源の喪失が砂漠化につながりうることを大臣に思い起こさせる必要がある。この砂漠化は、今からおよそ50年で、ガーナが厳しい干ばつに直面する可能性があり、国土の大部分が砂漠になってしまうことを意味する。

 今は、大部分のアフリカ諸国が、それぞれの国の長期的食糧安全保障の追求の助けとなるGM技術研究を急ぎ、それに真剣に取り組んでいる時代だ。現在、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、エジプト、その他の国が、キャッサバ、ジャガイモ、トウモロコシ、バナナ、コメ、油ヤシ、ココナッツなど、多くの基礎食糧に影響を与える作物病防除のためのGM技術研究の適用でアフリカをリードしている。東アフリカ諸国は、現在と将来の人口を養うための食糧生産に新たな技術を利用することを決断し、東部・中部アフリカ農業研究強化協会(ASARECA)と称する組織を形成した。

 マリ・バマコにおけるバイオテクノロジーに関する最近のECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)閣僚会合で、西部・中部アフリカ・バイオセーフティー・システムのコーディネーターであるWalter Alhassan教授 も、バイオテクノロジー導入が食糧安全保障と貧困削減のための伝統農業の補完手段になり、新たな動植物品種の生産を容易にするー慣行農法に取って代わるのではないーと強調 、西アフリカでは、バイオテクノロジー導入に向けて本格的に準備を整えているのはナイジェリアだけで、他の地域に比べて遅れていると警告した。

 これこそが、食糧農業大臣の声明を憂慮せねばならない理由である。彼は、ガーナが新たな技術の研究をまったく試みることなく、遅れを取ることを望んでいるのだろうか。彼はGM技術の何を恐れているのか。大臣は、GM技術をめぐる多くの問題が未解決であるにもかかわらず、他のアフリカ諸国がそれを受け入れ、起きるかもしれない問題の解決策を共に見出そうとしていることを実感すべきである。 

 GMOに関する西アフリカ会議で、環境科学大臣は、新たな技術のこの地域での利用を確保する能力建設を改めて要請、潮流に乗るべきであり、”緑の革命”に乗り遅れた過ちを繰り返してはならないと警告した。彼女は、ガーナーそしてアフリカ全体ーが、社会的・経済的成長を促進するための科学と技術の開発に参画することを約束しているように見える。今は科学と技術の時代であり、有能な科学者、民間企業、投資家に導かれた西欧社会は、住民の生活の質を改善し、食糧安全保障を維持するために、バイオテクノロジーの無限の潜在力を急速に引き出しつつある。

 ガーナ人を含むアフリカ人は、西欧社会がいかにして、また何故、増大する自身の人口を養うのに成功した上に、土地と無限の労働力をもつアフリカ人を養う余剰まで生み出したのか、冷静に考えてみる必要がある。答えは単純だ。西欧社会は、アフリカの人口も含む急増する世界の人口を養うための最適の作物収量を求める研究を常に続けてきた。アフリカの諸政府が重債務貧困国の地位を与えられたというニュースに祝杯を上げ、その政治家などが汚職にふけっている間に、インドと中国を含む第三世界諸国は、ゆっくりと、しかし着実に自給と自助に進み、西欧諸国への依存を減らしてきた。

 ガーナは、GM技術のレースから身を引いてはならない。さもないと取り返しのつかない遅れを取ることになる。食糧農業大臣は、その声明を真剣に再考せねばならない。

 我々はGM食品を必要としない(by Isaac Kusi,Ghanaian Chronicle (Accra) via AllAfrica.com,9.1
http://allafrica.com/stories/200509010666.html

 このサイトにはGM食品に関するいくつかの記事が掲載されてきた。農業大臣は、この問題で逆転宙返りを演じてきた。私は最初、GM食品禁止を聞いたときには褒め称えた。数日後には、彼はGM食品支持に寝返った。

 ガーナは1957年に独立を勝ち取った。次いで、完全に新植民地化されたから、独立を失った。今の植民地支配者は、城に留まって直接物事を指示するわけではない。我々が選挙し、指名された役人を通して命令する。あるいは、彼らの利益を代弁する社会の有力者に報償を払う。モンサントのような会社がアフリカにオフィスを構え、GM食品を推進するとすれば、それは、秘められた目的である利潤を伴う新たな植民地化の一形態である。

 我々は、GM食品の味方をして有機製品を放棄せよと命じられる。我々がそれを利用するようになれば、苦心して稼ぎ出す外貨をこれらの種子の輸入に使うことになる。我々が国の通貨で支払うときでさえ、このカネは利潤の形で外国に移転される。我々は既に、投資家に対して、その利潤を100%移転させるインセンティブを与える法律を通過させた。我々は何を得るのか。仕事はできるが、ペイを受け取るのは仕事に就く労働者だけだ。モンサントのウエブサイトを覗くと、ケニア、マラウィ、セネガル、南アフリカ、タンザニア、ウガンダに、戦略的にオフィスが設置されたことが分かる。ガーナにも、NGOを装って既に入り込み、わが国の科学者を含む決定者に影響を及ぼそうと試みている。8月22日の記事で、Abrokwah教授は、これら諸国の一部がこの技術を受け入れたと述べている。

 GM作物は単位面積当たりの収量を増加させるという議論がある。しかし、ガーナ北部での機械化された農業、灌漑、適切な土壌保全、輪作などの我々の農業方法に関する改善ができれば、国の消費と輸出のために十分な有機食品を化学肥料なしで栽培できる。

 わが国食糧生産に影響を与える別の多くの要因もある。わが国は森林破壊につながり、次には天候パターンに影響を与えてきた木材輸出を奨励した。現在の政府は、幼齢で伐採することさえなければ百年は好影響がある植林に大きな投資をすべきである。家族計画促進の努力はあるが、禁欲教育に多くの努力が注がれるべきである。テレビが入ってきた60年代、我々は教育番組を見た。昼日中にテレビの前に座り、数学を勉強した。今では、揺れるお尻か、外国のソープオペラばかり、一層のセックスと無責任な出産を煽り、人口の指数関数的増加、養わねばならない人口の増加を招いている。まともな映画や音楽を入れることで、チャンネルを浄化する必要がある。そうすれば、人口増加の抑制につながる。1980年の人口は1000万だったが、25年後には2200万にもなった。

 地球のすべての果実の種は神が創造した。なのに、3週間の間腐ることなく冷蔵庫に入れておくことができる種なしブドウやトマトを、私は何故スーパーに買いに行かねばならないのか。農民がGMトウモロコシ、大豆、ワタを栽培しようとすれば、種を所有する会社に買いに行かねばならない。それを作り出した会社がその所有権をもつ。この技術を複製しようとする他のいかなる会社も、所有権を侵したと訴えられることになる。風が吹き、GM農場から自分の農場に花粉が運ばれ、知らぬ間に、あるいは誤って交雑が起きれば、作物所有者は合法的に私を追跡する。種がヤムイモを栽培するために創造されたなどと誰が想像できようか。科学者でさえ、GM食品の人間やその環境への影響は完全には分かっていない。除草剤耐性のスーパー雑草や殺虫剤抵抗性のスーパー害虫が生み出されることへの怖れがある。一部のGM種子は、殺虫剤を挿入されている。その一部は、所有者がその作物を同定することを可能にする識別指標を挿入されている。我々はこんなものを食べたいとは思わない。

 有機農業こそが進むべき道である。政府は多数のトラクターを輸入してきた。我々は、それを土地を耕すことに利用せねばならない。有機市場は急速に成長しており、ガーナの農産品が世界中で好まれるようになるだろう。