フランス裁判所、GM作物破壊は遺伝子汚染を予防する”緊急避難” 破壊者を無罪放免

農業情報研究所(WAPIC)

05.12.12

 フランス・オルレアンの軽罪裁判所が129日、フランスの遺伝子組み換え(GM)作物に反対する人々が行なったGM作物破壊行動を“緊急避難”と認める画期的判決を下した。問題は、49人の“自発的刈り取り人”が2004年と2005年にロワレット県にあるモンサント社圃場で栽培されていたGMトウモロコシを2回にわたり“自発的に”刈り取ったことにかかわる。

 裁判所は、彼らが、やむをえぬ事態への対応(緊急避難)のための集会で他人の財産を自発的に損壊する違法行為を犯したことを立証したと認めた。国は45人の被告に対する禁固3年の刑罰を要求していたが、彼らは無罪放免ということになる。モンサント社はこの事件をめぐる民事訴訟で398000ユーロの損害賠償を請求していたが、認められたには6000ユーロにすぎなかった。

  重要なことは、組み換え遺伝子の無統制な拡散は慣行または有機栽培に影響を与える汚染源となり得るという意味で、他人の財産に対する現実の、かつ差し迫った危険をなすと認めたことである。彼らの行動はこのような組み換え遺伝子の無統制な拡散の結果にすぎないということになる。判決は、このような無統制な拡散は、「均衡の取れ、健康を尊重する環境のなかで生活する」という、また2004年の環境憲章で承認された市民の憲法上の権利を省みても許されないと言う。

   その上、フランスはGMOの故意の放出に関するEU指令の諸条件を完全には国内法化しておらず、とくに環境リスクの正確で詳細な評価を要求するEU指令の国内法化を怠ってきたとこの問題に対する国の怠慢も指摘する。

  ル・モンド紙の報道によると、同様な事件で過去に3ヵ月の懲役刑に服した農民同盟の元スポークスマン・ジャン・エミール・サンチェスは、フランスは事実上“無法状態”にある、「これは反GM運動にとっての偉大な勝利だ。このような訴訟で初めて被告人が放免された。この決定が判例とならねばならない。今後、政治的決定が待たれる」と言う。

   また、左翼政権時代のドミニク・ヴォワネ元環境相(緑の党)は、これは、「憲法に組み込まれ、刈り取り人たちが拠り所とした予防原則を認めたものであるから、非常に貴重な決定だ」と言う。さらに、緑の党のセーヌ・セント・デニス元老院(上院)議員は、「今後もっと前進する必要がある。GMOはイタリア、オーストリア、スイスで禁止された。フランス政府は民主的論争を組織せねばならない」と勢いづく。

  しかし、国とモンサント社は控訴する予定という。当面、この判決も国を動かすことはありそうもない。

 情報源
 
A Orléans, les anti-OGM remportent une victoire importante devant la justice,Le Monde,12.9
  http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3226,36-719690@51-704165,0.html
  La justice relaxe des Faucheurs volontaires en invoquant le "danger imminent" des OGM,Le Monde,12.10
  http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3226,36-719827@51-704165,0.html
  OGM: relaxe des «faucheurs volontaires» du Loiret,Liberation,12.10
  http://www.liberation.fr/page.php?Article=343970

  関連情報
 フランスで1000ha以上のGMトウモロコシ栽培 早急な共存措置制定を迫る,05.9.6