ブラジルに密輸GMトウモロコシ 高まる環境と輸出への悪影響の懸念

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.12

 アルゼンチンからの密輸遺伝子組み換え(GM)大豆を最初に栽培、結局は今年3月の政府公式承認を勝ち取ったブラジル・ヒオ・グランジ・ド・スウ州で、今度は未承認のGMトウモロコシ種子が密輸・販売されていることが明らかになった。昨年12月23日付けの国際プレスサービス(IPS)の報道は、Frei Sergio Gorgen州代議士が、小規模種子会社・Agropecuaria Campesatoによるアルゼンチンから密輸されたモンサント社製GMトウモロコシの販売を確認したと報じている。土地無し労働者運動(MST)に関係した週刊誌・"Brasil de Fato"は、このトウモロコシの一部にはモンサント社の除草剤耐性品種・RRGA21に使用される遺伝子・GA21が含まれると指摘したともいう。

 Contraband Transgenic Maize Causes Alarm
 http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=31557

 この報道によると、GM大豆は大豆栽培面積の80%を占めるに至り、他の諸州にも拡大しているが、Claudio Langone環境副大臣は、トウモロコシは大豆と異なり、環境と農業に一層大きな影響を及ぼす恐れがある、それは”直接授粉”作物だから、GM品種に加えられた遺伝子が拡散し、通常のトウモロコシを汚染する可能性があると語っている。

 彼は、GM規制法が未発効であり、GM作物の拡大が”悲劇的”結果をもたらす可能性を考えれば、国へのGMトウモロコシ導入は”無責任”だと言い、環境への取り返しのつかない影響とブラジル農業への信頼の喪失、一定市場への輸出に対する脅威を指摘する。彼によると、トウモロコシは国内消費向けだが、ブラジルの輸出で重要な地位を占める豚や鶏の基本的生産要素である上に、それと知らずにGM製品を食べることになる消費者の権利も違法に侵害することになる。

 州で訴訟を起こしたGorgen代議士によると、密輸者を発見し、密輸を止めさせ、モンサントの責任を決めることは、いまや警察、司法、農業当局の問題になっている。彼は、GM大豆は最初の5年間、一層多くの農薬を必要とし、生産コストを引き上げたから、農民は大いに失望している、その上世論は味方しておらず、大規模農民連合も違法種子をめぐるさらなる係争は望まない、食肉産業は、豚や鶏がGMトウモロコシで飼育されれば輸出市場を失うことになると恐れていると言う。

 州種子生産・販売者協会のNarciso Barison会長も、ハイブリッド・トウモロコシ種子は大豆のように再生産することが難しく、認証された種子生産者により保証された品質を持たない違法種子を使用すれば農民は”劇的な生産性低下”に直面することになると警告する。彼自身の農場も、違法なGM大豆で損失を蒙ったと言う。

 しかし、政府農業研究機関のバイテクセンター研究者であるElibio Rechは、ブラジルにおけるGM作物開発を積極的に推進すると言う。彼は、密輸GMトウモロコシによる大きな環境影響は予想されない、GM作物は他の植物を汚染する可能性があるが、それを防ぐ”方法と障壁”があると反論する。

 とはいえ、この問題をめぐる論議は当分決着がつなないだろう。昨11日には、政府系広報ウェブサイトもこの問題に触れた。それは、農民が罰せらることは望まない、罰せられるべきは密輸者、販売者、宅多国籍企業であり、モンサントは国により罰せられねばならないというグリーンピースの主張を取り上げている。

 Transgenic corn threatens Brazil's biodiversity,Agencia Brazil,1.11
 http://internacional.radiobras.gov.br/ingles/materia_i_2004.php?materia=252505&q=1&idioma=IG

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