カルタヘナ議定書締約国会合 GMO表示で立ち往生 ブラジル政府に深い亀裂

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.14

  13日、ブラジル南部のパラナ州州都・クリチーバでバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書締約国第三回会合が始まった。しかし、国際プレスサービス(IPS)によると、この会合における交渉の最大の争点である遺伝子組み換え(GM)製品の表示をめぐる問題で、ホスト国であるブラジルの立場が定まらないために、116ヵ国からの交渉者とオブザーバーが立ち往生しているという。

 ENVIRONMENT : Brazil Still Has Doubts on Labelling of Transgenic Products,IPS,3.13
 http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=32486

 それによると、ブラジル政府は、国境を越える移送品のラベルに”LMOs(生きたGMO)を含む”と書くか、それとも”LMOsを含む可能性がある”と書くかをめぐって深く分裂している。クリチーバにいるマリナ・シルバ環境相と1300km離れたブラジリアにいるルーラ大統領が電話で討議しているらしい。環境省代表者がジャーナリストに対して行った非公式声明によると、大統領とこの問題に直接かかわる農業省及び環境省の間で、”LMOsを含む”という言い回しを支持するが、最大4年をかけて段階的に実施するという妥協案が交渉されているという。

 論争の焦点になっているのは、食料または飼料としての直接利用を意図したLMOsはLMOを”含む可能性がある”と明確に確認する文書を伴い、またさらなる情報への接触点を含まねばならないと定める議定書の第19-2a条である。ブラジル政府の立場が定まらない背景には、アグリビジネスと環境団体の激しい対立があるということだ。

 9ヵ月前にモントリオールで開かれた第二回会合では、ブラジル政府は輸出品にLMOsが存在することを確認する要件を後退させようと動いた。そうすることでアグリビジネスをなだめようとしたが、環境団体の抗議を爆発させることになってしまった。環境団体に支持された環境省は、農業省とバイテク機関が推奨する”含む可能性がある”という表示に反対して、”LMOsを含む”という表示を支持している。アグリビジネス代表者は、大豆の大輸出国であるアルゼンチンと米国が議定書に調印しておらず、この要件を免除されるから、LMOsを確認するコストがブラジルの競争力を殺ぐと主張する。

 会合のオープニング・セッションで、GMOモラトリアム政策を取るパラナ州の知事は、「”含む可能性がある”という婉曲な表現が例えばスーパーで販売される製品に拡張されれば、保存肉の容器に”腐った肉を含むかもしれない”という警告表示をするのと同じようなことになる。あるいは、政府は環境の利益と人々の国家的利益に反するものを含むかもしれない”と警告表示できることになる」と政府の無責任な態度を批判した。

 グリーンピースもこれに呼応、「政府が立場を変えなければ、ブラジルは議定書を破壊し、バイオアンセーフティー議定書を創り出すことになる」と批判したという。

 GM作物の最大の栽培国である米国とアルゼンチンがバイオセーフティー議定書に加わらない上に、やはり最大のGM作物栽培国に加わったブラジルもこのような状況であれば、「GMO汚染」は永続を免れない(GMO汚染コントロールは失敗ー英国NPOとグリーンピースが世界初の汚染目録,06.3.11)。

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