USDA 2007年農業法公聴会の意見を集約 工場的農場やGM作物に批判の嵐

農業情報研究所(WAPIC)

06.4.1

 米国農務省(USDA)が3月29日、将来の米国農業政策について生産者とその他の関係者の意見を聞く昨年の全国巡回フォーラムで出された意見の要約を発表した。

 LETTER FROM AGRICULTURE SECRETARY MIKE JOHANNS & FARM BILL FORUM COMMENT SUMMARIES,06.3.29

  ジョハンズ農務長官は、これはUSDAの政策見直しと次期(2007年)農業法案の準備過程における分析の基礎として役立つと言う。これらの意見が将来の農業政策にどこまで反映されるか、確かなことは言えないが、現在の米国農業・農業政策を強く批判する意見も随所に見られる。米国農業・農業政策が重大な曲がり角に差し掛かっているのではないかと想像される。

 意見は42の分野について表明されており、ここでそれらのすべてを紹介することはできないが、例えば米国農業の最大の特徴の一つをなす”農業集中”ー工場的農場は、多くの人々が強く批判している。多くの人が、工場的農場を助成すべきではない、それは排除され・小農場が促進されるべきである、などの意見を表明している。そして、一般的に、企業農業が余りに急速に伸びすぎた、政府は小農場が企業農業と同じ土俵で競争できるように助けるべきだとか、あるいは多くの若い農業者・小規模農業者は大規模なコングロマリットのために働くことを強制されていると考えられているという。これは、とりわけ4社で弱齢牛の80% 、豚の64%、羊の57%(2004年)を処理する食肉産業の集中と強力な支配力に対する強烈な批判である。

 http://www.usda.gov/documents/Agricultural_Concentrationd.pdf

 ここでは、こうした問題と並んで特に論争の激しい遺伝子組み換え(GM)作物の導入をめぐる意見に注目しておきたい。USDAがその導入を促進してきたこと、今後の一層の普及を望んでいることは確かだ。そして、2005年には、大豆、トウモロコシ、ワタの栽培面積の87%、52%、79%がGM品種で占められるに至っている。それにもかからず、このフォーラムに参加した多くの生産者と関係者がこの現状と将来に不安を表明している。これらの意見を紹介しておこう。

 http://www.usda.gov/documents/BIOTECHNOLOGY.pdf

 ・参加者は、一般的に、ヨーロッパや世界のその他の地域では、非GM食品がますます重視されるようになっており、GMOは安全な食料源として信用されていないとコメントした。参加者は、GMOへの依存を減らすために、USDAは他の国民が求めてきた高品質の非GM製品の開発を奨励すべきだと示唆している。

 [大部分の参加者が、USDAとは逆に、GM作物依存を減らせと言っているわけだ]

 ・多くの参加者は、すべてのGM製品の強制表示を要求した。彼らは、GMOを食べ、栽培することは選択されるべきで、多くのアメリカ人はGMOを食べることを望んでいないと言う。

 [これもGM製品は対応する非GM製品とは同等に扱われるべきで、表示は無用どころかGM製品の安全性への信頼を損なうとして、強制表示に強く反対してきたUSDAの方針とは真っ向から対立する]

 ・多くの参加者は、海外市場のGM作物拒絶のために起きる経済的損害から保護するために、GMOの特許保有者や製造者からのGMO汚染の厳格な賠償責任を要求した。

 ・多くの参加者が、栄養価の減少、GMO導入以来の消費者の病気の増加、環境の化学的損傷を含むGM作物の危険に警告した。

 ・かなりの(some)参加者は、(国際市場にアクセスするために)厳格な監視、あるいはGMO使用の規模縮小、あるいはすべてのGMOの禁止を要求した。

 ・多くの参加者は、GMOや化学的浸襲性研究のための資金供給を減らすことで、有機・特別作物、非GM食品に関連した研究・開発を強化することを望んだ。

 ・かなりの参加者が、大規模アグリビジネスが独占化し、その結果、農業者にGM種子の利用を強制することができないようにすべきとコメントした。

 これらの意見が多数派の意見であるのならば、従来の農業バイテク政策の根本的見直しを迫られていることになる。もしそれが実行されないとすれば、USDAは巨大アグリビジネスにより「ハイジャック」された”アグリビジネス産業省”だとする断罪が一層の真実味を帯びることになる(USDAは「アグリビジネス産業省」、デタラメな米国BSE対策の根源 新レポート,04.7.26)。

 なお、食品安全に関しては、かなりの参加者がダウナーカウが食料供給に入ることの永久的で完全な禁止を望んだという。USDAと大多数の生産者・関係者の意識は、いたるところで大きくズレているようだ。

 http://www.usda.gov/documents/FOOD_SAFETY.pdf