豪企業の耐塩性GM小麦試験 高塩性土壌で高収量 だがなお先は見えず

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.12

 西オーストラリア州における耐塩遺伝子組み換え(GM)小麦の最初のフィールド試験で、GM小麦の生存率が高塩性土壌で大きく高まることが示された。Grain Biotech Australia(GBA)社は、同社が開発したこのGM小麦と他の二つ対照非GM品種(Carnamah 及び Westonia)を多くのレベルの塩性土壌で栽培する比較試験を行った。同社の開発マネージャーのアラン・タフ氏は、試験結果は、塩性が非常に高い土壌ではGM小麦の方が生存率が高く、分げつも多く、高収量であることを示したと言う。

 Salt-tolerant GM wheat tests positive,Coutryman(The Western Australia),5.12
 http://countryman.thewest.com.au/20060512/cm-home-sto134155.html

 彼によると、1メートル当たり180ミリジーメンス(導電単位)という高い土壌塩性の下での耐塩小麦の最高穀物収量は、GM・Carnamahで20%、GM・Westoniaで23%高かった。1メートル当たり67ミリジーメンスの低い塩性レベルでは、非GM品種の収量がGM品種の収量よりも5%多かった。

 しかし、どれほどの塩性レベルでGM品種の収量の方が高くなるのかは現在の段階では言えない。また、塩性の測定で一貫した結果が得られない、また個々の植物体での塩性レベルを正確に決定できないという実験の制約もあるという。GBAは、今年、同じサイトでさらなる試験を行うことを当局に申請した。また、タフ氏は、支持者が予見できる将来に市販の道を見出せないときには、この分野でのさらなる研究のための資金を得ることが難しいことも恐れているという。

 このような試験結果にもかかわらず、実用化は当分望めそうもない。

 西オーストラリアは、オーストリア最大の塩化乾燥地を抱えており、土壌塩化に伴う損害は来るべき50年の間に大きく増加すると見られている。西オーストリア南西地域の塩化乾燥地は、既に430万haに広がっているが、2050年には880万haが影響を受けると予想されている(AUSTRALIAN DRYLAND SALINITY ASSESSMENT 2000)。塩害は、西オーストリアだけでなく、オーストラリアの農業の将来にとっての最大の脅威の一つとなっている(オーストラリア:塩害で80万haの農地が利用不能に,02.12.13)。それだけに、耐塩性品種開発にかかる期待は大きい。それは、オーストラリアのみならず、多くの途上国乾燥地域の期待でもある。バイテク企業はこの期待に応えると約束した。

 しかし、西オーストリアの開発の現状は、この期待には当分応えられそうもないGM技術の現状を象徴しているようだ。

 関連情報
 FAO報告による途上国のGM作物研究・開発動向(4)ー干ばつ等耐性及び品質改変作物,05.5.18