インドのBtワタ畑の放牧羊・山羊が謎の大量死 NGOはBtワタの安全性に疑念

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.22

  インド・アンドラ・プラデシュ州ワランガル県の11の村の遺伝子組み換え(GM)Btワタ畑で放牧されていた羊と山羊の25%が死んだ。4つの村を訪ねたNGO・持続可能な農業センターによると、この3ヵ月の間に1500頭近くが死んだ。農業省の畜産酪農局も1月から3月の間に羊と山羊の死がワランガル県から報告されたことを確認した。このNGOは、Btワタの羊と山羊への生物安全性影響を疑っているという。Hindu紙が21日付で伝えている。

 Mortality in sheep, goat after grazing on Bt cotton fields,Hindu,5.21
  http://www.hindu.com/2006/05/21/stories/2006052100051300.htm

 畜産局コミッショナーは、「毒血症症状を持つ羊と山羊の死がワランガル県から報告された。この死がバクテリアの毒血症によるものなのか、農薬によるものなのか、あるいはBtワタの葉が羊と山羊に有毒なのかどうか、一層の調査が必要だ。検討とさらなる調査のために、死んだ動物の内臓が大学に送られた」と語った。インド農業研究センターの専門家は、「動物について行われた死後検査は、中毒で死んだことを示している。腸に黒い斑点が発見され、肝臓も影響を受けている。死んだ羊と山羊には、いかなる原生動物・ウィルス・バクテリア・菌感染は発見されなかった」と言う。

 羊と山羊は、放牧2日後に動作がのろくなり、衰弱した。鼻水を伴う咳が出、口は赤くなり、びらん症状が出て、腸が腫れた。動物は放牧後5日から7日で死んだという。

 NGOはBtワタの安全性への疑いの声を上げた。Btワタを販売するMonsanto-Mahyco社の専門家によると、山羊に関するBtワタの安全性検査は行ったが、羊については検査していない、葉やさやの検査はしていないし、放牧に関する検査もしていない。

 NGO指導者によると、地域における伝統的な作物栽培からワタとトウガラシの商業栽培への移行のために、青刈飼料作物栽培地は少なくなっている。Btワタを栽培する農民は、収穫後の畑を羊飼いのために使い、動物は収穫された植物を食べることになる。Bt毒は緑の葉で活性を持ち、これら動物の死因の一つになると疑われる。農薬との複合影響も調査されているが、非Bt植物に使われる農薬は致死性を示していない。

 アンドラ・プラデシュ州政府はMonsanto-Mahyco社にBtワタ品種を禁止した(インド、南部の1州でのBtワタ販売を禁止 害虫防除に効果なし,05.5.7)。しかし、州で栽培される国内企業種子にBt技術を開放してきた。

 モンサントによると、1998年に産業毒性学研究センターで90日間の山羊への給餌試験を行ったが、Btワタ種子(葉やさやではない)は非Bt種子と同様に安全だった、また、Bt蛋白質はワタの葉には微小な量しか発現せず、標的害虫以外の昆虫を損傷することはない。「もしこのような動物の死が本当に起きているとすれば、残留農薬ー高レベルの有機燐成分とカルバミン酸塩ーへの暴露など、様々な原因があり得る」と言う。

 [この記事を紹介したのは、Btワタの安全性に疑念を呈するためではない。紹介したのは、インドにおけるBtワタの今後の採用動向に大きな影響を与えることになるかもしれないと考えたからである。真の死因は今後の調査に待つほかはなく、現時点では一切の予断は許されないー農業情報研究所]