米国消費者 GM食品の受け止め方はなお混沌 動物クローンには過半数が”不快”

農業情報研究所(WAPIC)

06.12.10

  米国の”食料及びバイオテクノロジーに関するポーイニシアティブ”(The Pew Initiative on Food and Biotechnology)が米国消費者の遺伝子組み換え(GM)食品とクローン動物をどう受け止めているかに関する最新世論調査結果を発表した。

  米国では、1996年にGM作物の商業栽培が始まり、その後急速に拡大、現在では米国で栽培される大豆の90%ほど、トウモロコシの60%ほどが除草剤耐性または殺虫性のGM作物となっている。これらの多くは動物飼料用に使われるが、多種多様な食品にも少量ではあるが含まれている。メディアもその便益とリスクを強調するようになった。

  それにもかかわらず、最新の調査でも、GM食品について消費者が知るところは少なく、GM食品に対する消費者の態度は混乱したままであることが明らかにされた。しかし、動物クローンについては、植物の遺伝子改変に比べてずっと反対が強いこともわかった。米国消費者のGM食品に対する態度はなお固まっておらず、どうなるかは次世代バイテク製品がどのように導入されるか、その便益とリスクがどう受け止められるかに決定的にかかっているという。

 http://pewagbiotech.org/research/2006update/2006summary.pdf

 最新の調査は2001年1月、2003年8月、2004年9月、2005年10月の調査に次ぐ5回目の調査で、2006年9月20-26日に1000人の消費者を対象に行われた 。動物クローンに対する態度は初めて調査した。

 GM食品の認知度に関しては、未承認GMトウモロコシ・スターリンクの食品の混入が発覚して大騒ぎとなった2000年直後の2001年の調査では、GM食品について聞いたことがある、あるいはそれが店で売られていると答えた人は44%だったが、この比率は続く2回の調査では34%、32%に急減した。その後増えたが、2005年:41%、2006年:40%で、なお2001年のレベルに戻っていない。今年は長粒米への未承認GM米混入事件があったが、その影響もほとんどない。聞いたことがないという人がなお58%(2006年)と過半数を占める。

 この認知度の低さに加え、GM食品に対する知識も浅薄なようだ。米国では表示制度もないから、ほとんどの人がそうとは知らずに多少なりともGM食品を食べているのは間違いが、GM食品を食べたことがあると思っている消費者は27%にすぎず、60%の消費者はGM食品は食べたことがないと答えている。信じられないような知識レベルの低さだ。

 GM食品に反対する人は2001年の58%から2006年には46%に落ちた。しかし、2001年に反対が多かったのはスターリンク事件の影響だろう。2003年には48%に急減、その後僅かな減少傾向は見られるものの、2006年も46%と大きな変化はない。他方、GM食品を支持する人は、2001年以来、25-27%のレベルに固定している。

 GM食品の安全性については、正直なところ誰にわからない。”不確実”というしかないのだが、安全かどうかわからないという人の比率は2001年の46%から2006年には36%と大きく減った。しかし、これは消費者の意見がどちらかに固まりつつあることは意味しない。基本的には安全とする人の比率が29%から34%に増える一方、安全でないとする人も25%から29%へと同じように増えている。意見は収斂しつつあるのではなく、分裂が深まっている。

 安全と考える人にも不安がないわけではない。現在の規制に関する意見を問う質問には、既に規制過剰と答える人は16%にすぎず、41%の人が規制強化を望んでいる。この比率は2003年にはそれぞれ10%、35%だったから、どちらも増えている。しかし、過剰規制派はなお圧倒的少数であることに変わりはなく、ますます多くの人が現在の規制では不十分と考えるようになっている。

 興味あることは、規制者である食品医薬局(FDA)が提供する情報を多くの人が信用しておらず、FDAへの信頼がますます落ちる傾向があることだ。2001年、FDAの情報が最も信頼できるとする人は41%で、FDAは他の誰(友人・家族、農民、科学者、ニュースメディア、バイテク企業、食品製造業者)よりも信頼を得ていたが、2006年にはこの比率は29%(第4番目)に急落した。2006年、信頼できるとする情報源は友人家族がトップ(37%)で、次いで農民の33%、科学者の32%となっている。ニュースメディアを大いに信頼するとする人は9%で最低、バイテク企業(11%)、食品製造業者(14%)、政府規制官(14%)もほとんどの人が信頼していない。

 要するに、大方の消費者はGM食品に対する態度を固めるための信頼できる情報に事欠いているということだ。

 これに比べると、動物クローンに対する態度にはもっと収斂がみられる。これを不快と受け止める人は半数を超えている。GM食品に反対しない人でさえ、34%が動物クローンは不快と言い、特に毎週の宗教活動に参加する人では、不快とする者が70%に上る。これに関しては、安全性の問題を超えた宗教的立場、あるいは倫理的立場が態度の決定に大きな影響を与えていると推定できる。FDAは間もなく、クローン動物の肉や乳の販売を承認するつもりらしいが(米国FDA 年内にクローン動物由来食品販売を許可 米紙が報道,06.10.17)、それがバイテク企業や畜産農家が期待するような畜産”革命”をもたらすほどの市場を獲得するのは難しそうだ。

 (ただし、植物も動物もかけがえのない生命体であることに変わりはない。自然、あるいは神が絶対にできない、あるいはしようとはしない強制的的生命操作を植物には認めて、動物には認めないというのは人間の身勝手さの現れだろうか。 動物・人間の体を作り・生命活動のエネルギーを供給する有機物(炭水化物・蛋白質)は植物しか生産できない(炭酸同化=光合成、窒素同化)というのにだ)