EU環境担当委員 Btトウモロコシ2種の拒否を要請 標的害虫以外の生物に悪影響の恐れ

農業情報研究所(WAPIC)

07.10.27

 欧州委員会のディマス環境担当委員が二つの殺虫性遺伝子組み換え(GM)トウモロコシーシンジェンタのBt11とパイオニアのBt1507ーを許可しないように望んでいる。EU内部者によるこのような要請は、1996年にGMOの承認が始まって以来、初めてのことだ。

 ル・モンド紙によると、その理由は標的害虫以外の昆虫への悪影響があり得ることだ。欧州食品安全機関(EFSA)の公式環境影響評価では健康と環境へのリスクはないとされたが、6月に開かれた国際シンポジウムで、EFSAも”非標的生物に対してあり得る影響の評価のためには、もっと特別な手続きが必要であろう”と認めた。そして、ディマス委員によると、最近発表された多くの科学的研究は、これら二つのトウモロコシが生み出す毒が他の昆虫の成長を遅らせ、死亡率を高める可能性を示している。また、”水や沈殿物の中の毒の存続のような他の側面は研究されてこなかった”という。

 ディマス委員の提案は委員会内部で討議されることになるという。

 Deux maïs transgéniques mis en cause au sein de la Commission européenne,Le Monde,10.26

 なお、この二つのGMトウモロコシは、日本ではどちらも既に許可済みだ。米国でも最近、Btトウモロコシが水生昆虫と水生生態系に悪影響を与える恐れがあるという画期的新研究が発表されたが’(Btトウモロコシがトビゲラ→水生生態系に悪影響の恐れ 米国の新研究,07.10.11)、消費者の関心が食品としての安全性に傾きがちな日本では、GM反対者の間でさえほとんど話題になっていないようだ。このニュースも、多分、”優先席付近では 携帯電話の電源をお切りください”の放送同様、馬耳東風で聞き流されるのだろう。