フランス食品安全機関 GMトウモロコシ・MON810は安全 政府は禁止継続の姿勢

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.13

  2月12日付けのフィガロ紙が、人と動物の健康や環境への影響の不確実性の故に、予防原則に基づき・EUのセーフガード条項に依拠してフランス政府が商業栽培を禁止しているモンサントの殺虫性遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ・MON810について(参照:フランス政府 新たな科学的事実でGMトウモロコシ栽培禁止へ 長期的影響の一層の評価も必要,08.1.14)、1月23日付けのフランス食品衛生安全機関(AFSSA)の未公表の意見書が、このようなセーフガードを正当化するようなリスクのいかなる科学的証拠もないとした08年10月30日の欧州食品安全機関(EFSA)の意見の基本的部分を認めていると暴露した。

 Le maïs OGM est sans danger pour l'homme, selon l'Afssa,Figaro,2.12
 http://www.lefigaro.fr/sciences/2009/02/11/01008-20090211ARTFIG00653-le-mais-ogm-est-sans-danger-pour-l-homme-selon-l-afssa-.php

 これが事実とすれば、フランス政府は商業栽培禁止の根拠を失うことになる。しかし、ジャン=ルイ・ボルローエコロジー相は同日、衛生問題にかかわるAFSSAの意見は、基本的にば環境影響を理由に商業栽培を禁止するセーフガード措置を問題にするものではないと語った。フィロン首相もブリュッセルで、同様の理由で禁止を維持すると語ったということだ。

 欧州委員会は、同様なセーフガードを続けるオーストリア、ギリシャに対してと同様、フランスにも早急なセーフガード廃止を迫ってきたが、ディマス環境委員はもともとGM作物の環境安全性に懐疑的で(EU環境担当相 二種のGM(Bt)トウモロコシ栽培禁止方針を公に確認,07.11.26)、EFSAの意見にもかかわらず、懲罰措置は延ばしてきた。EU諸国もこれを防衛してきた(EU GMOリスク評価で加盟国の役割を強化 GMOフリーゾーンも可能に,08.12.5)。AFSSAの意見にもかかわらず、状況 がすぐに変わることはなさそうだ。

 France/maïs OGM: Paris maintient la suspension des cultures (Fillon),Agrisalon,2.12
 http://www.agrisalon.com/06-actu/article-21842.php
 Nouvelle tentative de réhabilitation du maïs transgénique en France,Le Monde,2,12
 http://www.lemonde.fr/planete/article/2009/02/12/nouvelle-tentative-de-rehabilitation-du-mais-transgenique-en-france_1154323_3244.html#ens_id=1154122

 なお、EFSAの意見*は、セーフガードを正当化するためにフランスが掲げたありとあらゆるあり得るリスクを否認した。フランスが環境リスクの一つとしてあげる近隣の非GMトウモロコシの花粉汚染のリスクさえ、ヨーロッパには野生近縁種はなく、交雑の恐れがあるのは農場で栽培されているトウモロコシだけだから、環境を害するものではない、経済的利害にかかわる共存の問題にすぎないと片付けた。いささか強引にも見える論法だ。フランス政府が納得しない理由もこの辺にあるのかもしれない。

 *http://www.efsa.europa.eu/cs/BlobServer/Scientific_Opinion/gmo_op_ej757_greek_safeguard_clause_on_mon810_maize_en.pdf?ssbinary=true