EU オーストリアとハンガリーのGMトウモロコシ栽培禁止の解除に失敗

農業情報研究所(WAPIC)

09.3.4

 3月2日にブリュッセルで開かれたEU環境相理事会が、オーストリア政府とハンガリー政府による二種の遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの栽培禁止の解除を求める欧州委員会の提案を拒絶した。

 European Council;2928th ENVIRONMENT Council (provisional version) - Brussels, 2 March 2009,09.3.3
  http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_data/docs/pressdata/en/envir/106430.pdf

 二種のGMトウモロコシとは、両国がともに禁止する殺虫性トウモロコシ・MON810と、オーストリアが禁止する除草剤耐性トウモロコシ・T25である。EUレベルでは既に承認されているが、両国はGM遺伝子の拡散で周辺の自然環境や近隣農場が悪影響を受ける恐れがあるとして、EU指令のセーフガード条項を適用、その栽培を禁止してきた。

 禁止解除を求める欧州委員会の提案を支持したのは、EU27ヵ国中、英国、フィンランド、オランダ、スウェーデン、エストニアの5ヵ国だけだったという。

 MON810に関する今回の決定は、EUレベルでの承認が90年の旧指令に基づくもので、新たな環境リスク評価基準を含む2001年指令(→EU:遺伝子組み換え体に関する新規則案,02.7.5)の下での再評価を受けていないなどの手続き上の理由のほか、2008年12月4日の決定(→EU GMOリスク評価で加盟国の役割を強化 GMOフリーゾーンも可能に,08.12.5)が、脆い生態系や特別の農学的・環境的特徴を有する地域における生物多様性の保護を確保するために、禁止措置を含む管理または制限措置を取る可能性を強調したことを理由に正当化されたということである。

 この決定を支持したドイツのガブリエル環境相は、モンサントの製品で社会的価値が増えるとは考えられない、農家の企業依存を強めるだけだ、欧州委員会が何故禁止解除のために闘い続けるのか、未だ分からないと言ったそうである。 「

 Austria, Hungary Allowed to Keep Ban on Genetically Modified Crops ,Deutsche Welle,3.2
 http://www.dw-world.de/dw/article/0,,4068097,00.html
 OGM : la Commission européenne désavouée par une majorité d'Etats,Le Monde,3.3
 http://www.lemonde.fr/planete/article/2009/03/03/ogm-la-commission-europeenne-desavouee-par-une-majorite-d-etats_1162590_3244.html#ens_id=1154122

 EU セーフガード条項適用によるGM作物生産・販売禁止国と禁止作物種

Infographie Les restrictions à la production et la commercialisation d'OGM en Europe,Le Monde,3.3
http://www.lemonde.fr/planete/infographie/2009/03/03/les-restrictions-a-la-production-et-la-commercialisation-d-ogm-en-europe_1162409_3244.html#ens_id=1154122)から