農業情報研究所農業バイテクニュース:2011年12月3日

殺虫性GMトウモロコシ 害虫の抵抗性発達で効力喪失の恐れ 米環境保護庁がモンサントに警告

  アメリカ環境保護庁(EPA)が11月30日、トウモロコシや大豆の主産地をなす中西部の少なくとも4つの州―アイオワ、イリノイ、ミネソタ、ネブラスカ―で、モンサント社の殺虫性遺伝子組み換え(GM)トウモロコシが効力を失いつつある恐れがあるというメモランダムを公表した。

 メモは、これら4つの州における作物損害の記録と昆虫学者の報告(参照:米国トウモロコシ主産地で殺虫性GMトウモロコシの根が重大な食害 Bt毒抵抗性の根虫が増殖)からして、このGM植物に組み込まれた土壌細菌(Bt)が作り出す殺虫成分(Cry3Bb1蛋白)に対する標的害虫(ルートワーム、根切り虫)の抵抗性発達が疑われるとし、抵抗性が疑われるケースのモンサントによるモニタリングは不適切であると指摘する。

 2009 Resistance Monitoring Review for Cry3Bb1
 http://www.regulations.gov/#!documentDetail;D=EPA-HQ-OPP-2011-0922-0003

 これに対し、モンサント社は、EPAのレビュは深刻に受け止めるが、Cry3Bb1蛋白に対するルートワームの抵抗性の科学的確認は実証されていない、会社はすでに、二つのタイプのBtによってルートワームを殺す同社の新製品・SmartStaxの利用や大豆等との輪作など、農家に対する”最善管理方法”の推奨で対策を講じているとする声明を出した。

 Monsanto Addresses EPA Memorandum on Corn Rootworm Protein (Cry3bb1), Reinforces Commitment to Proactive Product Stewardship(Monsanto,2011.12.1)

 しかし、EPAのメモは、害虫がBtトウモロコシへの抵抗性をすでに発達させている畑でのSmartStaxの利用は、これに対する抵抗性の発達を速める恐れがあると指摘している。SmartStaxについては、抵抗性発達を遅らせるために設定しなけばならない”避難地”(Bt作物栽培地の害虫が”避難”する隣接通常作物栽培地)の割合が従来の20%から5%になるために、抵抗性発達を遅らせる措置の有効性も減じるだろうと言う。

 EPAは、モンサントはBt毒への抵抗性が疑われる畑の修復プランを実行すべきだ、これには、通常の殺虫剤の使用によってシーズン末期にルートワームの成虫を殺すことや、それに続くシーズンにおける抵抗性発達を遅らせるための代替害虫管理方法の利用が含まれるという。