農業情報研究所農業バイテクニュース:2013年1月30日

BASF EUへのGMポテト承認申請を取り下げ EUでの農業バイテクに見切り

 世界最大のドイツ化学メーカー・BASFが29日、欧州連合(EU)に提出している3種の遺伝子組み換え(GM)ポテト―カビ病抵抗性のフォルトゥーナ、工業用スターチ生産用のアマデアモデナ―の商品化許可申請を取り下げると発表した。これらプロジェクトへの投資の継続は、EUの規制の枠組み不確実性と実験圃場破壊の脅威からして「正当化」できないという。

 BASFは2012年1月、ヨーロッパ向けの遺伝子組み換え(GM)作物の研究開発から撤退、一部のGM作物開発はアメリカに移し、GMスターチポテト(Amflora=EUで承認済み、Amadea、 Modena)、疫病抵抗性ポテト(Fortuna)、真菌(カビ)病抵抗性小麦など、専らヨーロッパでの栽培のために開発したきたGM作物の開発と販売はやめると発表している(BASF ヨーロッパ向けGM作物開発から撤退)。ただし、この時すでに承認手続きが進行していた上記3種のGMポテトの承認申請は取り下げていなかった。

 Pommes de terre OGM : BASF retire ses demandes d'autorisation dans l'UE,Le Monde,1.30

 欧州委員会が今月22日、その任期が切れる2014年まで、一切のGM作物栽培手続きを停止したという情報が流れた。

 Bruxelles dément vouloir geler le processus d'autorisation de culture des OGM,Le Monde,1.23

 EUのGM作物許可制度は、欧州委員会と加盟各国、各国間の対立で、200年代後半から麻痺状態に陥っていた。この麻痺状態から脱するために、2010年来、GM作物栽培の認否に関する各国の裁量の余地を大きく拡大する制度改革が追求されている(EU GM作物栽培の認否 各国の裁量に 共存措置にも柔軟性 GMフリー地域も可 欧州委が提案,10.7.14)。しかし、この改革をめぐる議論自体が袋小路に入り込んでいる。今は、承認手続きを進めるより、この袋小路からの脱出に力を注ぐべきだ。これが現欧州委の判断となったわけだ。

 この情報が流れた直後のBASFの決定である。改革に時間がかかるだけではない。新たな制度に移行したとしても、多くの国の承認は得られそうにない。EUレベルで承認されたAmfloraは、やはり承認されたGMトウモロコシ・MON810ともに、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、オーストリア、ハンガリー、ギリシャ、ブルガリア、ポーランドの8ヵ国が、現行EU制度で認められた「セーフガード」条項を適用、今も禁止を続けている。BASFは、EUに見切りをつけたのだろう。