農業情報研究所農業バイテクニュース:2014年3月19日

トウモロコシ根切り虫 二つのBt毒素に抵抗性 GM作物だけでは害虫と闘えない 米国の新研究

 昨年8月、アメリカのトウモロコシの最大害虫である根切り虫(Western corn rootworm)が遺伝子組み換え(GM)トウモロコシが産生するBt毒素・Cry3Bb1に対する抵抗性を獲得しているかもしれないというイリノイ大学作物学教授・Michael Grayの観察について伝えたが(イリノイの殺虫性GMトウモロコシ畑で重大な根切り虫被害 Bt作物も根を保護できない疑い,13.8.29)、今度はアイオワ州立大学の昆虫学者・Aaron Gassmannが率いる新たな研究が、アイオワの一部の畑では、この根切り虫が三つのうちの二つのBt毒素、Cry3Bb1とmCry3Aに対する抵抗性を発達させていることを明らかにした。

 Cry3Bb1を産生するGMトウモロコシが米国で承認されたのは2003年のことである。2009年までに、このGMトウモロコシに根切り虫被害が見られるようになった。2011年には、この被害はmCry3Aを産生するGMトウモロコシにも広がった。Gassmannは実験室でのテストで、これはCry3Bb1への抵抗性を発達させた根切り虫はmCry3Aにも抵抗性を持つようになった”交叉抵抗性”のケースであることを示した。恐らくは二つ毒素が構造的類似性と虫の消化管の結合部位を共有しているためであろうという。

 根切り虫が非常にタフで、Btトウモロコシはこれを完全に退治するほど大量の毒を産生しないことにも問題がある。やはりトウモロコシの大害虫であるヨーロッパアワノメイガ(芯喰い虫)のような害虫に対して使用されるBt毒素は99.99%殺すが、根切り虫は2%以上生き残る。同じ種類のトウモロコシを毎年作り続けると、根切り虫の抵抗性は急速に発達する。

 Gassmannは、害虫と闘うためには作物を定期的に換えること(輪作)で害虫のライフサイクルを攪乱せねばならないと言う。

 Gassmann, A. J. et al. ,Field-evolved resistance by western corn rootworm to multiple Bacillus thuringiensis toxins in transgenic maize,PNAS,14.3.12
  http://www.pnas.org/content/early/2014/03/12/1317179111

  Pests worm their way into genetically modified maize,Nature News,14.3.17