モンサント次世代GM棉 インドでの発売計画を取りやめ 特許料をめぐるインド政府との紛争が昂じて

 

農業情報研究所農業バイテクニュース: 2016年8月27日

 

キーワード:モンサント、遺伝子組み換え(GM)棉、インド

 

  モンサント社が種子使用に際して支払われる特許料の引き下げを決めたインド政府に抗議、新世代害虫抵抗性遺伝子組み換え(GM)棉(Bollgard)のインドでの発売計画を取りやめた。過去10年以上にわたりGM棉の恩恵を受けてきた700万インド綿作農民には大打撃となる恐れがある。

 

 インドは綿作に例年大きな被害をもたらしていた棉実蛾対策として2002年にモンサントのBollgardを導入した(インド:遺伝子組み換え(GM)棉承認、途上国のGM採用に拍車か,02.3.28)。そのおかげで、200203年には302㎏/㌶であった綿収量は急上昇、2008年には550㎏/㌶を超えるまでに増え、201314年にも552㎏/㌶を維持していた。ところが、この2年、現在使用されているBollgard IIの害虫抵抗性が弱まり始め、15年、16年の収量は500㎏/㌶に落ちた。

 

 農業専門家は、既にオーストラリアで使用されているGM種子の最新版(Bollgard II Roundup Ready Flex)に切り替える必要があると叫んでいる。しかし、インドの棉種子の60%を販売するインド種子メーカーはコスト上昇と国の種子価格管理によって窮状に追い込まれ、Bollgard遺伝子利用のためのライセンス料を払うことができないと訴えている。モンサントも、特許付きのBollgard遺伝子を使う9つのインド種子会社が前季に販売された種子の特許料6500万ドルの支払いを拒んだことを明らかにしている。

 

 インド政府は昨年12月、棉種子価格とモンサントに支払われる特許料の国による統制を始めると宣言した。今年4月、インド種子メーカーがモンサントに支払う料金を最終種子価格の20%から6%に引き下げると発表した。

 

 かくて特許料をめぐるモンサントとインド政府の紛争は、次世代種子の許可申請(今年7月)取り下げという破滅的状況に発展したわけだ。これにより、インド農民は次世代種子を永久的に使えなくなる。モディ首相は土着の棉品種の利用を奨励すると言っている。

      

Monsanto stops release of new Bt cotton tech,Hindu,16.8.26

 

Monsanto steps up India cotton seed dispute,FT.com.16.8.25;Monsanto ratchets up cotton dispute,Financial Times,16.8.26,p.3 

 

ただし、モンサントはインドでの商売を諦めたわけでもなさそうだ。バイエル、ダウ、デュポンパイオニア、シンジェンタと組んで、モディ政府の規制への反撃にの乗り出すという。インド種子業界も分裂、政府価格統制に反対するグループも誕生したという。

 

Foreign seed firms rally behind Monsanto in Indian alliance,Reuters,16.8.27 

 

Seeds of discontent: NSAI splits as pro-Monsanto firms break off,Hindu Business,16.8.26