Z、歯科関係者の皆さんへ
介護の現場であまりにも口腔ケアがおろそかにされていると思われませんか?
介口ケアに対する認識が不足していると思われませんか?
歯科関係者がもっともっと介口ケアの重要性を語るべきではないでしょうか。
厳しい言い方をするならば歯科関係者自身がもっと介口ケアに関心を持つべきだと思います。


2007・3月号デンタルハイジーンに掲載された
介護の世界に革命を起こそう
 フローレンス・ナイチンゲールに次いで世界でその名を知られている
看護教育の指導者バージニア・ヘンダーソンが
「看護の基本となるもの」という看護師のバイブル的な本の中に
「患者の口腔内の状態は看護ケアの質を最もよく表すものの一つである」
という一説を残され、大熊由紀子さんは
「介護のレベルは、要介護者の口を見ればわかる」と表現しておられます。
そして介護先進国では口腔ケアはとても大切にされています。
 
しかし残念ながら我が国では介護認定のアセスメントに口腔衛生の項目すらなく
要介護者の
口の中は、十分な清掃がされずに汚れたまま放置されているケースが少なくありません。
 
歯科の訪問診療においても、当面の治療のみで終わってしまい、
その後の口腔ケアまでに至らないケースがほとんどです。(かつての私もそうでした)

特に悲惨なのは歯のある寝たきりの方です。
意識ははっきりしているのに体の自由が利かず唇を噛みちぎったり、
破折した残存歯の鋭利な先端によって舌や粘膜を傷つけたり、
歯で舌を挟んだままだったり・・・・このような状態で
猛烈な痛みを抱えながらも訴えることすらできない方が数多くおられます。
 私は、このような患者さんに出会う度に
「もし、自分だったら・・・」と身震いを感じてきました。

そして「お口を診せてもらいに来ましたよ」と声をかけると瞳の奥でホッとされます。
私は過去にもこのような身震いを感じた事がありました。
それは学生時代の解剖実習の時です。
我々が解剖する御遺体は高齢者の方で、床ずれの為、皮膚に
ぽっかりと開いた穴から擦りきれて平らになった腰骨が露出していました。
中には後頭部の骨まで露出している御遺体もありました。

長い人生を生き抜いた末に何年も何年も痛みに耐えて死を待つ・・・。
誰がそんな最期を望んだでしょうか。
私は床ずれを見るたびに生前の地獄の苦しみと無念を思い、
「もし、自分だったら・・・」と身震いを感じずにいられませんでした。

しかし今では、これほどのひどい床ずれは体位変換やエアーマット、
薬の進歩などの床ずれ対策によって消えつつあります。

私は床ずれ地獄から寝たきりの人々を救った床ずれ対策は介護の偉大な革命だと思います。

そして次の革命は口腔ケアだと思っています。

私は訪問診療をする機会を得て、多くの患者さんを診せて頂きながら
介護や医療の現場において口に関心がなく患者さんの口が汚れたままになっている状況に
「なんとかしなくては・・・」と考えてきました。

 私自身口腔ケアに悩み試行錯誤を繰り返した末、
吸引をしながらの口腔ケアにたどり着きました。

そして歯科医やDHがバキュームテクニックを医療や介護の現場で披露して、
吸引をすることによって口腔ケアが容易になる事を知ってもらい、
介護者を指導して日常のケアを定着させ、定期的に検診とDHによる
PTB(プロによる歯磨き)を行えば日本中の要介護者の口の中はきれいになる・・・と考えました。

始めは吸引機に掃除機と瓶とホースを使った手製の物を用いて口腔ケアをしていたのですが、
嵩も大きく見た目も滑稽で、特にDHが単独で診療所を離れ介護の現場に行きプロとして
口腔ケアをするのに、ブラシや自家製吸引器やカップめんの空き容器ばかりではなく、
自転車でも簡単に持ち運びができ存在感のあるプロ専用の口腔ケアアイテムが必要だと思い
6年ほど前に口腔ケア用携帯バキューム(ケアクリニック)を作りました。
ちまたでは、好評で在庫もなくなり改良型のケアクリニックUも作りました。

しかし、実際は前述したように訪問で口腔ケアをする歯科医や衛生士は少なく、
また歯科が医療や介護の現場にアプローチしてもなかなかすんなりと受け入れてもらえないようです。

そこでまず医療や介護の現場で口に関心を持ってもらうために、
誰もが指導を受けずに口の中を観察しながら使える
口腔ケア用電動歯ブラシ(仮名オーラルクリーナー)を作っています。

私は平凡な町の一開業医ですが、今、この瞬間もベットの上で痛みに耐えて汚れた口で
歯科医や歯科衛生士が訪れるのを心待ちにしている寝たきりの方がたくさんおられる現実を知っています。

歯科医療に携わる者として、たとえ稚拙なアイデアであっても、ほんの些細な力であっても行動を起こし、
できれば何かいいものをも残せたなら・・と思っています。

これからは有歯顎の高齢者が益々増えてきます。

私たちで介護の世界に革命を起こして、何時の日か日本中の要介護者の口をきれいにして
世界に誇れる介護先進国にしようではありませんか。

一人一人が革命の戦士です。

周りに寝たきりの方がおられるなら、枕元に駆けつけて口の中を覗いてください。

そこには歯科衛生士としての新しい存在への問いかけがきっとあると思います。

 

我々の手で介護の世界に革命を起こそう!!!

私は要介護者の口をきれいにするべく作戦をたて、
5年前に携帯バキューム=ケアクリニックを作りました。

DHが診療所を離れプロとして介護の現場で口腔ケアをするのに、
いろんな歯ブラシや自家製吸引器やカップめんの空き容器だけではなく、
ちょっと周りをびびらせる専用アイテムが必要だと考えたからです。

DHがバキュームテクニックを介護の現場で披露して、吸引をすることによって
介口ケアが容易になる事を知ってもらい、医師、看護師、ヘルパー、家族を指導して
日常のケアを行ってもらう・・・そしてDHは定期的にPTBを行えば
日本中の要介護者の口の中はきれいになる・・・と考えました。

しかし、実際は訪問で口腔ケアをする歯科医や衛生士は少なく、
また歯科が医療や介護の現場にアプローチしても
なかなかすんなりと受け入れてもらえないようです。

そこで私は作戦を変更して、今新たに
介口ケア用給水吸引電動歯ブラシ=オーラルクリーナーを作っています。

これは誰もがとりあえず口の中を観察しながら簡単に日常の歯磨きをしてもらえる機械です。

先ずはオーラルクリーナーによって歯磨きをしてもらって、口腔内の異常を見つけたり、
アマチュアが行う介口ケアの限界を感じてもらい、介護の現場から歯科にアプローチをしてもらおうと考えています。

私の作戦は稚拙で私の力はほんの微かなものです。

しかし、今、この瞬間もベットの上で痛みに耐えて汚れた口で歯科医や衛生士が来るのを
心待ちにしている寝たきりの方が数多くおられます。

歯科医療人としてそのような人がいることを知りながらじっとしてはいれないでしょう。

ぜひ介護の世界に革命を起こして、何時の日か日本中の要介護者の口をきれいにして
世界に誇れる介護先進国にしようではありませんか。

革命の戦士は皆さん一人一人です。

周りに寝たきりの方がおられるなら、その枕元に駆けつけて口の中を覗いてください。

そこには歯科衛生士としての新しい存在への問いかけがきっとあると思います。

 

 

《訪問による口腔ケア》
 診療に多忙な日々を送られているかと思います。 そのなかでの訪問診療は確かに大変です。 特に最初は、 長い間放置されてていた口腔内をきれいにするのが大事で、義歯の作成・調整 の前に、くたくたになってしまいます。だから治療が済めばほっとします。
  しかし本来、訪問で治療が終わっても、定期的にずっと診せていただく必要が必ずあります。とりわけ残存歯のある患者さんは、頻繁に口腔ケアが必要なのです
が、個人開業をしていると、Dr.はそんなに時間を裂くわけにはいかず、どうしても行き届いた管理をさせていただくのが難しい・・・というのが現状です。
 私も苦労して口腔衛生の改善をしてもしばらくぶりに診せてもらうとすっかり元の木阿弥・・・という苦い経験を幾多としてきました。
《治療の前にDHによる口腔ケア》
 私の医院では訪問治療と平行して、また治療がが終わった後もずっと、DHさんに単独で、週一回口腔ケアに行ってもらい、患者さんにとても喜んでもらっています。治療の前に(できれば直前に)DHに口腔ケアをしてもらうのが理想です。そうすると治療がしやすいばかりでなく治療時間も非常に短縮できます。勿論、ご承知のように同日であっても時間を異にすれば訪問歯科衛生指導料は、歯科訪問治療料とは別に月4回までは請求できます。ここで問題はDHの確保と育成です。DH一人の訪問は負担が大きく、またDHが一人で訪問に出かけられるまでにはかなりの経験が必要です。
《なぜ寝たきりの方の口腔清掃が難しいか》
 残渣やプラークがいっぱいの患者さんが来られたなら治療前にブラッシングをします。その時3wayシリンジやバキュームを使って汚れを流し時折口をゆすいでもらいます。このプロセスを省いてはブラッシングは考えられません。この当たり前のことが、訪問ではできないので難しいのだと思います。まして、訪問の患者さんは体力の弱ったお年寄りや重い障害を持つ方です。小さな刺激で大きな影響を与えてしまいます。 吸引器を用いた清掃法は、日頃の診療に近い条件で口腔ケアができますし、患者を想定した練習も診療所のチェアーでバキュームを使って行うことができます。
《訪問DHの確保と育成》

 これまで敷居の高かった訪問口腔ケアも、敷居を低くすることによって、診療所のDHのみならず、結婚をされたり、子供さんが幼かったりの理由で丸一日診療所に勤められないDHも「週3回午前中だけ」等の条件で 訪問にだけ行ってもらうことができます。DH不足の今日、私のところも訪問DHの一人は、社会福祉専門学校に通いながらのパートです。そのDHさんも「患者さんに会うのが楽しい。勉強になる。中途半端な時間でも働ける。・・・」と喜んでくれています
《これからの歯科業界》
 益々高齢化が進んでいきます。それに伴って〔通えない患者さん〕も増えていきます。また、歯科治療の充実によって歯のないお年寄りのほうが珍しくなるでしょう。今はまだ「歯科の往診ってあるの?」「歯科が往診に来て何をするの?」という声を聞くこともありますが、すぐに訪問歯科診療や口腔ケアは不可欠となりま
す。
 訪問口腔ケアの継続は、患者さんに喜びと健康と快適さを提供でき、 医院と患者さんや家族の方の暖かいつながりを保ち続けることができます。 これは、医療人としての大きな歓びかと思います。 通えない患者さんのお世話をし続けて、臨終の時にはお悔やみの一つも言って介護の方と悲しみを分かち合う・・・そんな歯科医/歯科衛生士がもっと必要です。

  私は今後、歯科の業界は寝たきりのお年寄りを支える大きな力になるべきで、そしてそれはDHによる口腔ケアなしでは考えられないと考えます。これからどんどん増えつつある[通えない患者さん]の口を始めとする健康(肉体的・精神的・社会的)を守っていくのも我々の大切な使命の一つです。
《プロのテクニックをPRできるアイテム》
 訪問診療や口腔ケアへの対応は今後の歯科業界の評価や発展を大きく左右するでしょう。その成功の鍵を握るのが訪問DHの単独口腔ケアだと思います。そんな大切な使命を持ったDHさんのアイテムは誰もが使う歯ブラシです。
  ある介護の方が吸引器を使いながらのブラッシングをみて、「これまで、『ゆとりさえあれば歯磨きくらい私たちでもできる・・・』と思っていたのですが、やはり[餅は餅屋]ですね」のようなことを話してくれました。それを聞いて、とても複雑な気持ちになりました。残念ながらまだまだ口に対する関心の低い今日では、いくら高度なブラッシングテクニックを駆使して辛抱強い口腔清掃を行っても、相応の評価(成果もですが)を得られないことも多々あります。ぜひ、吸引器(少なくともプロは、自家製品でなくプロフェッショナルとして専用のアイテム)の使用によって、ブラッシングのみならずバキュームテクニックという技も披露して存在をアピールしてもらいたいと思います。そして、そのバキュームテクニックを用いたブラッシングを介護の方に指導してください。私の経験では、歯ブラシだけを用いて指導するときより、ずっと熱心に興味を持って聞いて実行していただけます。女子社員は〈オーエル〉飛行機の客室乗務員が〈スッチィー〉看護婦が〈ナース〉・・・のように要介護者の口腔ケアによって歯科衛生士が〈ディーエイチ〉と呼ばれるほどメジャーになれば、きっと多くの寝たきりの方が快適に過ごせていると思います。

  皆さんがいろいろと工夫されている様なことがありましたなら ご指導いただければと思います。 宜しくお願いいたします。