農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

EU:抗生物質の環境影響解決策の研究成果広報へ

農業情報研究所WAPIC)

03.6.26

 欧州委員会は25日、抗生物質の環境影響の解決策を世界で初めて発見したというEUの研究成果を、27日、スウェーデンのヨーテボリ、スカンジナビア最大の排水処理施設でメディアに説明すると発表した(A world first: European research discovers solutions to environmental impact of antibiotics,6.25)。

 この研究は、1)環境中の獣医用抗生物資の挙動と影響に関する研究(ERAVMIS)、2)排水中の抗生物質のアセスメントと除去技術に関する研究(REMPHARMAWATER)、3)「世界初の解決策(POSEIDON)」(ドイツ・ブラウンシュバイク排水処理施設でのパイロット実証試験で、抗生物質が環境放出防止のための処理過程で除去できることが証明された)の三本柱からなる。

 研究のバックグランドを欧州委員会は次のように説明している。

 多くのヨーロッパ諸国で、抗生物質やその他の医薬品(妊娠コントロールのピル、鎮痛剤、心血管・心臓病治療薬)の残留物が下水処理施設や未処理自然水に検出されている。排水処理を通じてのこれら個々の成分の除去率は様々であり、一部の標準的除去技術ではこれらのすべての成分の除去ができていない。その結果、河川や地下水も汚染されている国がある。

 さらに、獣医用抗生物質の土壌中での挙動とあり得る環境影響にも取り組む必要がある。抗生物質が動物に使われると、直接にか(農用地の動物)、間接的にか(厩肥の散布)、薬品や代謝産物が環境中に放出される。

 今までのところ残留抗生物質の環境集積に関する利用可能な情報はほとんどないが、EUの研究プロジェクトのデータは抗生物質やその他の薬品が下水や自然水の中に存在するのを確認した。ある場合には、飲料水中に代謝産物も発見された(ドイツ)。

 そのうえ、環境中の微生物群が抗生物質に曝されることで変異しているようにみえる。抗生物質耐性の増加が世界中で見られ、一定の病気の治療を困難にしている。従って、こうした問題と闘うための実際的なリスク評価手段を発見するために、これら成分とそのビヘイビアーや環境影響に関する知見を増やすことが重要である。

 これら三つのEUのプロジェクトは、今まで、水環境と土壌における抗生物質の存在と影響を評価するためのヨーロッパ規模でのデータを提供している。他方では、問題解決策を提案している。すなわち、排水からの抗生物質の除去(オゾン処理または太陽光処理による)がヨーテボリのブリーフィングで詳細に説明されるという。

 それぞれの研究プロジェクトの詳細には、上掲プレス・リリースに示されたアドレスからアクセスできるが、下に再掲しておく。

 Eravmis: http://www.cranfield.ac.uk/ecochemistry/eravmis
 Rempharmawater: http://www.unina.it/~rmarotta
 Poseidon: http://www.eu-poseidon.com

 関連情報米国:日常的に使われる薬品が河川を汚染ー地質調査局調査,02.3.14