農業情報研究所


中国:国の研究所レポート、遺伝子組み換え棉(Bt棉)は環境に悪影響

農業情報研究所(WAPIC)

2002.6.6

 4日、環境保護団体・グリーンピースが中国における遺伝子組み換え棉(Bt棉)の環境影響に関する研究結果を公表した。これは中国国立科学研究所により行なわれた実験所試験とフィールド監視の結果を報告するものであり、グリーンピースの手で発表された(executive summary full report )。

 一定のタイプの害虫を殺す毒を生産するために土壌バクテリアから得られた遺伝子を含む遺伝子組み換え(GM)品種である。中国では、1997年、これを害虫問題の魔法的解決策と宣伝するモンサント社により導入された。以来、Bt棉の作付けは増加を続け、2001年には全綿作面積の35%に相当する150万ヘクタールに達している。中国で栽培されるすべてのGM棉の3分の2がモンサント社のBt棉である。

 研究結果は、Bt作物は環境に悪影響を与えるというグリーンピース等の主張を裏付けるものであった。それは、以下の点を検証している。

 ・Bt棉の主要ターゲットである棉実蛾幼虫にBt毒抵抗性が生じた。Bt棉の葉を継続して食べさせた17世代後に、Bt毒に対して生き残る棉実蛾幼虫は70%に増えた。この給餌を40世代続けると、抵抗性は1000倍に増えた。

 ・棉実蛾幼虫の天敵が大きく減った。

 ・アリマキ、クモ、アザミウマ、その他の害虫が増え、いくつかの棉作圃場では主要害虫の棉実蛾にとって代わった。

 これらの要因により、農民は農薬使用の継続を余儀なくされ、昆虫群の不安定化による一定の害虫の爆発的発生の可能性が増大している。

 グリーンピースによれば(Chinese experience shows adverse impacts of GE cotton: report.)、報告の著者、南京環境科学研究所の研究者であり、グリーンピースのアドバイザーであるXue Dayuanは次のように言っている。

 「レポートはBt棉が環境中に放出されるのが早すぎたことを確認するものである。中国農民と科学者は、いまや深刻な問題に直面しており、遺伝子操作(GE)作物の環境との相互作用についてはほとんど何も分かっていないという事実に突き当たった。高い望みは崩れ落ち、現実はGE産業からの情報が実証されなかったことを示している」。

  また、グリーンピース中国プログラム・マネイジャーのLo Sze Pingは、モンサントのような企業はGE作物の開発と放出により引き起こされる損害に責任を負わねばならず、中国政府はこれを保証するように国際社会を促すべきだと言う。

 関連情報
 中国:遺伝子組み換え作物の開発に急進,02.4.24
 
インド:遺伝子組み換え(GM)棉承認、途上国のGM採用に拍車か,02.3.28
 
中国:科学者、大豆ゲノム研究プロジェクトを提案
 
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中国:高まるGM食品論議 
 
(追記:02.6.11)関連報道
 Safety of GM cotton crops in doubt,smh.com.au - The Sydney Morning Herald,6.10
 GM damages environment but not pests, says study,Guardian Unlimited,6.8

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