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英国:GMナタネ種子の土中残存の可能性が大、実験跡地のGM栽培停止へ

農業情報研究所(WAPIC)

03.7.28

 7月25日、イギリスの環境・食料・農村省(DEFRA)は、政府による農場スケールでの遺伝子組み換え(作物の評価(FSE)研究の一環としてGM油料種子ナタネを栽培してきたイングランドの農民が、このGM)秋、実験に供された彼らの畑に非GMナタネを栽培しないようにと警告した。これは、畑に残った種子から成長したGMGM植物に混入する恐れからくる実験参加農民の経済的リスクを最小限にとどめるための予防的植物が非措置だという(DEFRA News Release:DEFRA ENSURES PRECAUTIONARY ACTION AT GM OIL SEED RAPE EVALUATION SITES)。

 DEFRAによれば、この決定はDEFRAと環境放出諮問委員会(ACRE)の合意によるもので、非GM製品として認められるGMO混入比率の上限に関するEUの新たな決定(参照:EU新GMO規則成立、GM・非GM共存確保の指針も出たが・・・,03.7.24)とDEFRAが委嘱した予備的研究(参照:英国:GM作物の安全性は不確実、政府委員会報告,07.7.22)の結果としてなされた。この政府委員会による研究は、非GM品種とGM品種の双方のナタネ種子は、以前に予想されいた以上に土中に大量に残存する恐れがあることを示唆しているという。

 エリオット・モーオーリー環境担当相は次のように述べている。

 「我々はGMコントロールに関するすべてのルールを厳しく適用する決断をし、FSEのすべての側面について開放的で透明であることを確約する」、「GM実験で土中に残る種子は発芽し、収穫した作物は非GM作物に関する新たなEUの上限値を超える恐れがある。FSEに参加した農民が不利益を蒙ってはならないことは明らかである」。

 ただし、政府委員会の予備的研究はGMナタネ種子が予想されていた以上に土中に残留する可能性を示唆するものの、自生植物]群、あるいはFSEのサイトでの種子の存在の分析は含んでいない。この研究は今後、FSAのサイトで行なわれ、その結果が利用できるようになれば、将来の決定の指針となるという。この結果は秋まで待たねばならない。

 なお、マスコミ報道によると、政府委員会については、研究予算と職業上の地位を奪うという環境・有機農業団体に支持された委員の一人であるサセックス大学のスターリング博士への脅しがなされたことが明らかになった。スターリング博士は委員会議長当てに苦情を述べる書簡を送ったが、議長は、最終会合で、「職業上の地位、あるいは研究資金」を奪われるかもしれない「恐怖の累積効果は、オープンな論議、道理に基く議論、本質的な批判を容易に抑圧することになる恐れがある。アカデミックあるいは規制にかかわる特権的立場にある個人によるそのような行為は、科学勧告システムの信憑性と適切な機能を危機に陥れる深刻な脅威を生む」とこのような行為を強く非難、スターリング博士の委員会への貢献は、「注意深く、方法論的に熟慮された」と述べたという。最終報告書はGM推進者の圧力を排除するものとなったようである。それは全会一致で採択された。ただし、有機農業専門家である委員の一人は辞任したが、理由は不明という。

 関連報道
 Alert on spread of GM seeds,Guardian,7.26
 The GM plot:Scientist tried to sabotage work of top academic who is a sceptic,Independent,7.26
 Scientist take up GM panellist's case,FT.com-World,7.26