GM生物を閉じ込める100%有効な方法はない―全米科学アカデミー報告

農業情報研究所

04.1.21

 米国ナショナル科学アカデミーは20日、遺伝子組み換え(GM)生物が環境や人間の健康に意図せざる影響を与えるのを完全に防ぐのは難しいという政府委嘱の新たな報告書を発表した(⇒Biological Confinement of Genetically Engineered Organisms )。それは、GM植物・動物が野生に逃げ出すのを防止する多くの技術が開発されているが、大部分の技術は開発の初期段階にあり、どれも完全に有効には見えないと言う。

 いままでの多くの研究は魚をタンクで育てたり、植物を温室内で栽培する物理的封じ込めにかかわるものであった。だが、現在、バイテク企業や研究者は、成長の速いGM鮭、マラリアを伝播しないGM蚊、薬品や工業用化学物質を生産するGMコーンなど開発、海洋や野外に放出、あるいは開放的な広大な耕地での栽培を目論んでいる。これらが逃げ出し、生態系を乱したり、人間食料を汚染するのを防ぐ方法として、様々な生物的封じ込めの手段が研究されている。魚に余計な染色体を与えたり、昆虫を放射線に曝すことで生殖を不能にする、バクテリアが逃げ出したときに自らを破壊するように「自殺遺伝子」を組み込む、外来遺伝子を核ではなく葉緑体に組み込むことで花粉移動を防ぐなどの方法だ。

 今回の報告は、この生物的封じ込めに焦点を当てたものだ。報告は、多くの場合、生物がもたらすリスクは小さいから、このような封じ込めは無用だが、それが必要な場合には、同時に複数の方法を利用するのが有益かもしれないと言う。100%有効な単一の方法はなさそうだからである。報告はまた、このような方法は、事後にではなく、GM動植物の開発に先立って考えられるのが最善とも言う。

 報告書は200頁以上のものだが、オンラインで読める。どなたか技術内容の細部まで理解できる方がより詳細に紹介して下さればと願う。これは筆者の手には負えない。

農業情報研究所

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