欧州食品安全庁、GM植物における抗生物質抵抗性マーカー遺伝子利用について意見

農業情報研究所

04.4.14

 EUの食品リスク評価を引き受ける欧州食品安全庁(EFSA)が19日、遺伝子組み換え(GM)植物における抗生物質抵抗性マーカー遺伝子(ARMGs)の利用に関する意見を発表した(Opinion of the Scientific Panel on Genetically Modified Organisms on the use of antibiotic resistance genes as marker genes in genetically modified plants)。このようなマーカー遺伝子の利用は、GM植物からバクテリアへの遺伝子移転の結果として人間と動物における抗生物質への抵抗性を増す恐れがあることから、独自に設定した緊急課題としてリスク評価を行なった。許可申請者、EU構成国、欧州委員会へのARMGsの安全な利用に関するガイドラインを提供することが目的という。

 植物やその他の生物の遺伝子組み換えの過程では、ホスト生物の大多数の非組み換え細胞のなかから挿入遺伝子を含む細胞を選抜し、確認するために、通常、マーカー遺伝子が利用される。そして、この目的でしばしば使われるのが、特別の抗生物質に抵抗性をもつマーカー遺伝子である。しかし、この場合、ARMGsを含むGM植物から派生する食品中に存在する抗生物質抵抗性蛋白質により、このような食品を食べると抗生物質による治療が効かなくなる恐れがあると懸念されてきた。

 EFSAのGMOに関する科学委員会は、GM植物の販売許可申請の増加と、ARMGsの人間と環境に対するあり得る影響に照らし、この研究を提案した。委員会はGM植物から微生物への水平的遺伝子移転の可能性とこのような移転のあり得る影響を考慮、人間と動物の治療における当該抗生物質の使用状況も考慮した。委員会は次のように結論した。

 ・ARMGsは、有効な選抜を確保するために大多数の場合においてなお必要とされている。

 ・GM植物からバクテリアへの遺伝子移転は非常に起こり難いと考えられる。

 ・遺伝子移転が起こる稀な場合には、その人間と環境へのあり得る影響が、環境中及び腸内に存在するバクテリア中の抗生物質抵抗性遺伝子の自然の存在に対比して評価されるべきである。

 ・人間と動物の治療にとっての特定の抗生物質の重要性も考慮されるべきである。

 ARMGs使用に関するさらなるガイダンスを提供するために、委員会はARMGsを次の三つのグループに分類、これによって植物バイオテクノロジーにおけるARMGs安全使用のための最善の方法が助長されると言う。

 第一グループ:(a)土壌及び腸溶性バクテリアの中に広く分布しており、(b)人間の治療薬としては使われないか、使われることが少なく、獣医薬としての限定された分野での制限された利用があるだけの抗生物質への抵抗性を与える抗生物質抵抗性遺伝子。これは、カナマイシンへとネオマイシンへの抵抗性を与える抗生物質抵抗性遺伝子nptU、ハイグロマイシンを不活性化させる蛋白質を生み出す遺伝子hphを指す。この分類のものは、屋外実験あるいは販売のために制限する必要はない。

 第二グループ:(a)環境中の微生物中に広く分布し、(b)人間・動物の治療薬として限定された分野で使用される抗生物質に抵抗性を与える抗生物質抵抗性遺伝子。これには、クロラムフェニコール、アンピシリン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシンに抵抗性を与える遺伝子(CmR、ampr、aadA)が含まれる。これらは実験目的だけに制限、市販GM植物では不可。

 第三グループ:アミカシンへの抵抗性を与えるnptV遺伝子やテトラサイクリンへの抵抗性を与えるtetA遺伝子など、人間の治療に高度に使われる抗生物質への抵抗性を与える抗生物質抵抗性遺伝子。高度の予防的保健基準を確保するために、健康への脅威の現実的大きさの考慮とは無関係に、これら遺伝子が改変植物のゲノムに入るのは避けねばならない。実験植物にも、市販植物にも存在してはならない。

農業情報研究所

グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境