「除草剤グリホサート(ラウンドアップ)に発癌性の疑い」は「農業情報研究所」の誤解ではない

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.1

 先月、「除草剤グリホサート(ラウンドアップ)に発癌性の疑い」と伝えた(除草剤グリホサート(ラウンドアップ)に発癌性の疑い―フランスの研究,05.3.15)。これについて、他のページに、「NIHの原文読んだけど、発癌性など議論されていない  「農業情報研究所」なる組織の誤解と思われる。絨毛癌由来の胎盤細胞で、ヒト細胞への影響を見ている。ガンの話が出るのはそこだけ。一般に、なぜ、ガン細胞使って影響を見ているかといと、分裂回数に制限のない癌細胞が 培養に向くから。」と いう投稿があるのを知った(http://news18.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1110945854/l50)。

 専門家でない筆者は詳細な議論は展開できないが、「誤解」という点についてだけについては一言しておきたい。この研究報告(http://ehp.niehs.nih.gov/members/2005/7728/7728.pdf)は確かに「発癌性」に直接言及しているわけではない。研究は、グリホサートとラウンドアップがアンドロゲン(男性ホルモン)からエストロゲン(女性ホルモン)を作る酵素・アロマターゼの活性を高めることで、農業用に利用される場合よりも低濃度でヒトの胎盤細胞に有害な影響を与えること、とくにラウンドアップによる影響が大きいことを確認しているだけである。それと発癌性の関係につては、一切触れていない。

 しかし、エストロゲン(製剤の利用)と癌(とくに乳癌)の関係を疑わせる証拠は積み重なっている。アロマターゼの撹乱作用の確認は、癌との関連性を疑わせる証拠の確認につながる。この研究を発表した研究者自身、「何故アロマ-ターゼを使ったのか」の問いに、

 「先ず、アロマターゼは体の毒を取り除く酵素の一族に属する。第二に、アロマターゼはエストロゲンと呼ばれる性ホルモンの合成に利用される唯一の酵素である。

 従って、アロマターゼの撹乱が性形成に異常な影響を与えることがあり得るかどうか、乳癌や精子減退などのホルモン依存癌にかかわり得るかどうかを知ることは非常に重要だ。これがすべてのホルモン生成酵素のなかからこの非常に重要で、不可逆性の酵素を選んだ理由だ」と述べている(Glyphosate disruption of human hormones,EcoChem.com;http://www.ecochem.com/ENN_glyphosate(2).html)。

 つまり、この研究の中心目的自体の一つが、グリホサートとラウンドアップと癌との関係を探ることにあったわけだ。研究結果はこの関係を疑わせるに足る一つの証拠を提供した。「除草剤グリホサート(ラウンドアップ)に発癌性の疑い」と書いたのは、「農業情報研究所」の誤解ではないことを伝えておきたい。

 ついでに言えば、「農業情報研究所」は「組織」ではない。それはトップページをご覧頂ければ分かるはずだ。