オーストラリア 除草剤耐性GMキャノーラが激増 除草剤耐性雑草が出現するかと怯える非GM農民

農業情報研究所(WAPIC)

10.6.9

 除草剤耐性GMキャノーラ(菜種の一種)の栽培が急増しているオーストラリア・ニューサウスウェールズ州の非GMキャノーラ栽培農民が、除草剤・グリホサート耐性雑草が出現するのではないかと怯えている。

 グリホサートがかかっても枯れないこのGM品種の栽培面積はこの3年で倍増した。このためにグリホサートの使用も急増、雑草がこの除草剤への耐性を発達させる恐れが強まっている。しかし、グリホサート自体は広範囲の雑草に効くうえに、従来の除草剤に比べれば毒性も比較的低く、土壌中での分解も早いから環境残留性も小さい。いまでは、非GM農民にとっても極めて有用な除草剤となっている。

 しかし、GM品種の急速な拡大で雑草がグリホサート耐性となれば、この貴重な除草剤も有用性を失う。非GM品種を栽培する一農民は、「グリホサートは私たちすべてにとって信じられないほどに有用な除草剤だったけれども、使用回数が増えれば増えるほど雑草の耐性も増す可能性がある。こればっかり繰り返し使い続ければ、われわれの農業システムでは使えなくなる」と言っているそうである。

 Farmer worries about herbicide tolerance in GM canola,ABC Rural News,6.9
 http://www.abc.net.au/rural/news/content/201006/s2922348.htm

 米国学術研究会議によると、トウモロコシ、大豆、ワタの80%以上がこのようなGM品種となったアメリカでは、GM作物が導入されて以来現在までに、少なくとも9種の雑草がグリホサート耐性に進化した。同会議は、GM技術はアメリカ農業者に環境上・経済上の多大な利益をもたらしたが、GM技術への過剰な依存がこの利益を削り取る恐れがあると警告している。

 GM作物への過剰依存がその環境・経済便益を削り取る アメリカの新研究,10.4.14

 テネシー西部では昨年、一日に8cmも伸び、最終的には3m近くにまでなり、機械で取り除こうとすれば機械の方が壊れてしまう厄介極まりないパルマーアマランス(ブタ草の一種)というグリホサート耐性雑草まで出現した。一部農民は、除草剤耐性品種のおかげで可能になったと不耕起栽培を諦め、毒性が強い以前の除草剤も使う20年前のやり方に戻り始めている。高い種子代を払った上に、耕起のためにトラクタの燃料代も払わねばならない。このような農民にとって、GM作物の環境上・経済上の利益はすっかり失われている。農業専門家は、これは食料価格の上昇、低収量、農業コスト上昇、土地と水の汚染につながる恐れがあると言う。

 幸いにも、グリホサート耐性雑草の影響を受けている農地は、全体に比べればまだわずかな300〜400万ヘクタールにとどまっている。しかし、いずれはアメリカ農業全体が20年前のやり方に戻ってしまう恐れがある。グリホサートへの過剰依存からの脱却を急がねばならない。

 Farmers Cope With Roundup-Resistant Weeds,The New York Times,5.4
 http://www.nytimes.com/2010/05/04/business/energy-environment/04weed.html?ref=science

 参照:「スーパー雑草」の脅威 多様な農業 共存が重要 日本農業新聞 10.6.3 第3面 万象 点描

 しかし、オーストラリアの専門家は、「除草剤選択の幅は縮まっている、化学除草剤の補給線は近々干上がる」と警告している。長期的には、グリホサートだけでなく、化学除草剤そのものに過剰に依存する農業からの脱却を目指すほかなさそうだ。

 グリフォサート過剰依存で増える除草剤耐性雑草 農業多様化が解決策と豪学者,05.2.23

 関連情報
 
米国綿花地帯に広がる最強のグリホサート耐性雑草 綿花産業に破局の恐れ,06.12.19