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年5月31日
抄訳:フランスの農業と山地―高付加価値との関連 その2
抄訳:フランスの農業と山地―高付加価値との関連
原産地呼称 山地酪農部門の組織化要素
山地は何よりもチーズが豊かなことで特徴づけられる。少なくとも28種類の原産地呼称チーズが山地で生産される。重量でみれば、フランスで生産される原産地呼称チーズの69%が山地で生産されている。各山地は、その伝統と拘束に応じてチーズを創り出してきた。
何時の時代も、関係地域の人々は大消費地から遠く離れた地域の唯一の乳保存手段であるそれぞれの製品に非常な愛着を抱いてきた。この愛着は、農業開発・近代化が声高に叫ばれた1960-80年代にも、決して弱まることはなかった。技術進歩、革新は確かに歓迎されたが、何よりの気がかりは製造品の真正性だった。時に論議を呼ぶこうした政策は、多くの山地原産地呼称製品がその本来の品質を保存することを可能にした。同時に、製品をめぐるこの結束は、オリジナルな生産・加工組織を生み出した。例えば職能間組織(interprofession、生産者・加工・販売・流通業者の職能組織を糾合する組織)*の概念は、羊乳価格に関する大恐慌のあと、ロックフォール*について1930年に生まれた。
*ミディ・ピレネー地方・アヴェイロン県ミオーの町近くに聳える岩山(写真=訳者撮影。前景はタルン川とミオーの町)の洞窟に産するアオカビ(Penicillium
roqueforti)で熟成した羊乳チーズ。
数多くのチーズの維持は、土地とチーズの結びつきを保全しようとする人々の意志を示してもいる。例えばコンテの各製造所で使用される乳は、周辺25㎞の範囲内で集められたものでなけれなならない。従って、製造されるチーズは地方ごとの風味(arôme)を表している。こうしたやり方は統制原産地呼称(AOC)認証のおかげで保護されており、現在ではヨーロッパレベルでも保護原産地呼称(AOP)の名で保護されている。この法的武器は、条件不利地域におけるこれら部門の維持を可能にする基本的手段となっている。
AOCチーズは、その品質と評判により、他のチーズより平均46%高く売れる。すべての山地AOCが同じというわけではないが、こうした価格差は、組織された部門内のさまざまな当事者に均等な報酬をもたらし、山地の地理的条件と製品仕様から生じる追加費用をカバーすることを可能にする。それは特に、一定のAOC部門が世界市場の変転に結びついた乳価の下落から身を守ることを可能にする。
それに加え、この組織方式は、これら部門全体の雇用の保全も可能にする。サヴォワの三つのAOCの研究は、乳業における10万㍑当たりの雇用と投資は、他のチーズ製造地域よりAOC地域ではっきり上回っていることを示している。
モデルの有効性は証明済みだ。あとは、これら部門の保存に必要な政策の変化にこれを反映させることだ。EU共通農業政策の規制手段が漸次解体されるならば、それは酪農全部門を不安に陥れる。対決しなければならない自然の拘束からして世界やヨーロッパの他の地域との経済的競争に入ることができない山地ではなおさらだ。たとえ山地の乳製品が30%高くなるとしても、品質マークはこのオリジナルな経済を守るために枢要だ。全体的規制緩和は不可能だ。AOP/IGP(地理的表示)部門はEUに対し、製品の品質維持を保証するために、呼称組合が管理する量を増やせるように規則を変えることを要求している(注)。
注:フランスの山地産品は2000年12月15日以降、法規に基づく《山地》呼称の恩恵に浴しているが、他のEU、ヨーロッパ諸国では(スイスを除き)山地という言葉の使用を未だ統制しておらず、これら産品の価値引き上げの方法を開発していない。