カナダ産牛11例目のBSE 交叉汚染で新たな感染が続く国が「管理されたリスク」国?
07.5.4
カナダ食品検査局(CFIA)が5月2日、ブリティッシュ・コロンビア州の1頭の乳牛が狂牛病(BSE)と確認されたと発表した。
 CFIA News rekease:BSE 
CASE CONFIRMED IN BRITISH COLUMBIA,07.5.2
 
http://www.inspection.gc.ca/english/corpaffr/newcom/2007/20070502e.shtml
暫定情報では、この牛は66ヵ月齢というから、2001年11月頃の生まれということになる。1997年の”フィードバン”*以来4年以上を経たのちの感染であり、多くのBSEの感染源はBSE汚染肉骨粉入り飼料という通説を前提するかぎり、これらを含む フィードバン以後に製造された豚・鶏飼料やペットフードがどこかで牛飼料に混じる”交叉汚染”がこの感染を引き起こしたに違いない (フィードバン以前に製造された飼料がなお残存している可能性は小さい)。
*豚・馬以外の哺乳動物由来の肉骨粉を含む動物蛋白質ー乳・血液・ゼラチン・レンダリング脂肪・それらの製品は除くーの反芻動物への給餌の禁止
CFIAも、この牛の月齢が66ヵ月だったことは、「この牛が、非常に少量の感染物資に曝されたことーこれはその生涯の最初の1年の間に起きた可能性が最も高いーを意味する」と、交叉汚染を可能性が高いことを示唆する。
これにより、カナダ生まれの牛の狂牛病のケースは11例目となった(下表)。
カナダ生まれの牛の狂牛病確認例
| 
       確認年月  | 
      
       発生地域(出生地域)  | 
      
       畜種  | 
      
       年齢または出生年  | 
    |
| 1 | 2003.05 | 
       サスカチェワン州・アルバータ州隣接地域  | 
      アンガス | 
       8歳(1995年)  | 
    
| 2 | 2003.12 | 米国ワシントン州(アルバータ州) | ホルスタイン | 
       1997年  | 
    
| 3 | 2005.01 | アルバータ州 | ホルスタイン | 
       1996年  | 
    
| 4 | 2005.01 | アルバータ州 | 肉用牛・シャロレー | 
       1998年  | 
    
| 5 | 2006.01 | アルバータ州 | 交雑種 | 
       6歳(2000年)  | 
    
| 6 | 2006.04 | ブリティッシュ・コロンビア州 | 乳牛 | 
       6歳(2000年)  | 
    
| 7 | 2006.07 | マニトバ州 | 交雑種 | 
       ‹15歳  | 
    
| 8 | 2006.07 | アルバータ州 | 乳牛 | 
       50ヵ月齢(2002年)  | 
    
| 9 | 2006.08 | アルバータ州 | 肉用牛 | 
       8-10歳  | 
    
| 10 | 2007.02 | アルバータ州 | 非去勢雄牛 | 
       79ヵ月齢(2000年)  | 
    
| 11 | 2007.05 | ブリティッシュ・コロンビア州 | 乳牛 | 
       66ヵ月齢(2001年)  | 
    
(このほか、1993年にアルバータ州で英国からの輸入牛に狂牛病が確認されている)
感染源調査の結論ははっきりしないものが多いが、5例目、6例目については”交叉汚染”の可能性が非常に高いとされてきた。フィードバンにもかかわらず、豚・鶏飼料、ペットフードには特定危険部位(SRM)の利用が許されてきたのだから、交叉汚染感染は今後もダラダラと報告され続けることになるだろう。
 CFIA 
Completes BSE 
Investigation,06.3.3
 CFIA 
Completes BSE 
Investigation,06.6.16
CFIAがSRM全面禁止を実施するのは今年7月12日からである。カナダとの一体性を考えると、適切なサーベイランスさえあれば同様にBSEが発見されるであろう米国は、SRM禁止案の実行をすっかり放棄してしまったようだ。
 Canadian 
Food Inspection Agency Launches Feed Ban,07.3.15
 米FDA 死亡牛の脳・脊髄の飼料利用禁止案を撤回へ 経済コストが高すぎる,06.9.13
このように新たなBSE発生を抑えることができない国がどうして国際獣疫事務局(OIE)の言う「管理されリスク」国になるのだろうか。
米国やカナダのような国産牛BSE発生国がOIE基準により「管理されたリスク」国と認められるための不可欠の要件の一つは、「反芻動物由来の肉骨粉も獣脂かすも反芻動物に給餌されてこなかった」ことを証明できる[ただし、これが8年間行われてきたとは証明できない]ことだ。文字とおりに受け取れば、米国やカナダの”フィードバン”でもこの要件を満たすことができるのかもしれない。
しかし、この要件の目的、意味が新たなBSE感染が起きていないことを保証することにあるのは明らかだろう。この目的、意味を考えれば、交叉汚染による新たな感染を許し続ける”フィードバン”(CFIAもそれを認める)はこの要件を満たしていないと考えるのが正当だろう。
その上、今までの例では、米国もカナダも、いわゆる擬似患畜の”すべて”が、「もし生きていれば、恒久的に識別され、かつ移動がコントロールされ、と畜されたか、死んだときには完全に廃棄される」という「管理されたリスク」国の他の不可欠な要件も満たすことができていない。
このような国を「管理されたリスク」国とするOIE科学委員会の案(OIE科学委員会のBSEステータス案 現実のBSEリスクとは無関係,07.3.24)は、科学的どころか、それ自体が”政治的”決定の色彩が強いOIE基準さえ間違って適用しようとしているのではないか。