マレーシア パームオイル高騰でバイオディーゼル産業はなお”森の中”

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.15

  米国のバイオディーゼル産業が原料=大豆油の価格高騰(→シカゴ商品取引所小麦・トウモロコシ・大豆・大豆油・大豆ミール先物相場の長期推移)で苦境に立たされているが(ウィスコンシンのバイオディーゼル工場建設 大豆油高騰で建設中断,07.11.14;大豆価格高騰でカーギルが投資する米国バイオディーゼル工場が破産,07.11.13)、マレーシア・ビジネスタイムズ紙によると、バイオディーゼル生産者は、大豆油や菜種油に代わる安価な有力原料とされてきたパームオイル(椰子油)も、もはや当てにできなくなっている。

 存続可能な営業利益を上げるためには、パームオイル粗油(CPO)価格がトン当たり2,300リンギ(約680ドル)以下でなければならないが、今や、これは3,000リンギをうかがうレベルに張り付いている*。ロンドンの”Godrej International”社ディレクターのDorab E. Mistry氏**によると、原油価格は1バレル90ドル(301リンギ)を超えているとしても、パームオイル・バイオディーゼル生産者は、なお危険な森を抜け出していない。

 彼は、「CPOの価格が高すぎ、バイオディーゼルを生産しても利益が出ない。マレーシアとインドネシアのバイオディーゼル生産者は、絶望のなかで国の義務付けを要求している」、「すべての輸送用燃料へのバイオディーゼル5%の強制的ブレンドなしでは、この産業はやっていけない」、EUでバイオディーゼルが経済的なのは義務的ブレンド要求があるからにすぎず、ブラジルでも同じだと言う。

 High CPO prices put biodiesel boom out of reach,Business Times,11.14
 http://www.btimes.com.my/Current_News/BTIMES/Industries/Commodities/TOOHIGH.xml/Article/

  だが、そのEUにおいてさえ、バイオディーゼル産業の存続は容易なことではなくなっている(独バイオディーゼル企業 過剰生産と原料高、バイオ燃料税で生産停止に,07.10.25)。

 *指標となるマレーシア・デリバティブ取引所(BMD)の期近先物相場は、昨年10月にはなお1,500リンギほどで、今年4月にも2,200リンギにとどまっていた。しかし、6月から9月にかけては2,300−2,700リンギのレベルが定着、以後急騰を続けて10月末には2,900リンギを突破、3,000リンギに近づいている(CPO(パームオイル粗油)先物相場(マレーシア:BMD:期近)の推移)。

 **1パームオイル取引に1976年以来かかわっているという。

  Palm oil expected to yield higher returns this year,International Herald Tribune,07.3.12
    http://www.iht.com/articles/2007/03/12/bloomberg/sxpalm.php