タイ 鳥インフルエンザワクチン禁止継続を決定

農業情報研究所(WAPIC)

05.11.17

 タイ政府が16日、家禽へのワクチン接種の原則禁止を継続、ワクチン接種はケース・バイ・ケースでのみ行うと決めた。農家の強い解禁要求で禁止を継続するかどうか検討してきたが、タクシン首相が主宰し、保健、農業、商業、自然資源環境の各大臣が出席した16日のワークショップで最終的結論を出した。

 Vaccinating birds unsafe, says Sudarat,Bangkok Post,11.17
 http://www.bangkokpost.com/News/17Nov2005_news56.php
 Vaccine ban stays,The Nation,11.17
 http://www.nationmultimedia.com/2005/11/17/national/index.php?news=national_19180056.html

 決定は、ワクチンを接種された家禽はその体からなお鳥インフルエンザ・ウィルスを排出でき、これらウィルスはなお生きているからウィルスの発見と処理が難しくなるという家畜専門家とウィルス学者の見解に基づくものという。

 農相は会議で、「人間の安全を最優先する」と述べた。ウィルス拡散を止めるにはワクチン接種が有効と主張する放し飼いのアヒルや闘鶏を育てる飼育者からの圧力が強まっていることは認めたが、政府のコントロール措置は正しい軌道に乗っており、昨年の400の勃発に比べて今年は9地域に封じ込められているのがその証拠と言う。農業省は3年以内の勃発を終息させる目標を設定しており、年に2回、全国規模のチェックを行うことを計画している。ワクチン接種はウィルス発見を難しくするから受け入れられないと言う。

 また、農業省は、現在の飼育方法はウィルス拡散につながる可能性があるからと、家禽や放し飼いのアヒルの飼育方法の変更も要請している。最初の勃発以来停止している生鮮肉の輸出再開を期待し、安全な家禽を育てる新たな方法が導入されることになるという。

 しかし、フリーレンジダック飼育者クラブの会長は、決定に失望した、禁止はアヒルが病気になるのを防ぐための選択肢を減らすし、政府が要求する閉鎖システムは費用が高すぎると主張している。

 主要勃発国のなかではタイだけがワクチン接種に慎重な姿勢をとり続けている。恐らくは、家禽産業の輸出依存度が非常に高いからであろう。ワクチン接種で”清浄国”への復帰が遅れるという恐れこそ、多分ワクチン接種禁止堅持の最大の理由であろう。中国、ベトナムは家禽への大規模ワクチン接種を行っており、インドネシアもこれを導入した。ただし、これらの国では、タイ以上に勃発が続いている。ベトナムは、ホーチミンとハノイのすべての家禽の処分に乗り出した(鳥インフルエンザ 中国が全家禽にワクチン接種 ベトナムは2大都市の全家禽処分を計画)。

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