タイ、鳥インフルエンザが拡大、ワクチン接種要求高まる 密輸ワクチン使用

農業情報研究所

04.7.15

 タイの畜産開発局が14日、バンコク市内の各所で鳥インフルエンザを疑われる300羽以上の鶏・アヒル・ガチョウが死んだと報告した。検査でウィルスが確認されると、鳥インフルエンザは全体で8県を襲ったことになる。政府は前日、ウィルスがアヒルにジャンプしたと発表している。7月3日以来、1万羽以上が死ぬか、殺処分された。

 バンコク・ポスト紙によると、鶏輸出業者と養鶏農民の間にワクチン接種を認めよという声が高まっているが、開発局はウィルスが人から人に移るように変異することを恐れ、拒否している(Bird flu outbreak confirmed in city,Bangkok Post,7.15)。開発局は保健省に対し、鳥インフルエンザ・ワクチンがもつ危険性について国民を教育するのは非常に難しく、ワクチン接種の危険性について国民を啓蒙するのを保健当局が助けるべきだと要請した。

 大規模養鶏業者からの強い圧力と密輸ワクチンが使用されているという報告が、副首相主宰の鳥インフルエンザ国家委員会の問題見直しを促している。委員会は来週初めに声明を出す。開発局は、タイで発見されたウィルスはH5N1で、家禽から人にジャンプできるから最も危険なウィルスの株だ、ワクチンを接種された鶏は病気の兆候を示すことなくウィルスを広める保菌者となり、そうなれば病気勃発はコントロール不能になると言う。さらに、ワクチン接種はウィルスの変異を加速、人から人への感染能力を獲得することになるから、輸入業者がワクチンを接種された鶏を拒絶することによる経済的損失だけとどまらないとも言う。

 だが、養鶏農民は、ワクチンなしでは鶏は飼えないし、ワクチンは鶏繁殖企業から簡単に購入できると言っている。農民たちは現在、ワクチンを接種された鶏を1羽10バーツで企業から購入しているが、安全確保のためにワクチンを購入、自分で接種するつもりという。

 ワクチン接種は周到な監視下で行われなければ、開発省が恐れる結果につながる恐れがある。タイ国内の問題だけでは済まない。鳥インフルエンザ問題は大きな曲がり角にあるようだ。

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