農業情報研究所農業バイテクニュース:2014年2月17日

フランス政府 3月播種期前のGMトウモロコシ栽培禁止に突進 GM作物をめぐる攻防が正念場

 フランス農相及び環境相が2月17日、3月9日までのパブリックコメントを求め、殺虫性遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ・MON810の種子の販売と利用を禁止する省令案を発表した。今年の播種期(3月半ば)前の省令発布は2012年の環境会議での大統領の約束を実行するために必要な緊急措置だという。

 Le projet d’arrêté→http://agriculture.gouv.fr/IMG/pdf/Projet_arrete_interdiction_MON810_2014-02-12__cle0b1311.pdf

 フランス政府は2008年以来、MON810の栽培を禁止してきた(フランス政府 新たな科学的事実でGMトウモロコシ栽培禁止へ 長期的影響の一層の評価も必要,08.1.14;フランス政府 GMトウモロコシ・MON810の栽培許可を取り消せ EUに要求,12.2.21)。ところが昨年8月、フランスの行政最高裁(最高裁ではありません) であるコンセイユ・デタが、EU法違反を理由にこの禁止の解除を命じた。それでも、マーティン環境相とフォール農相は、2012年9月の環境会議の際に行った「他の作物栽培と養蜂業の環境および経済的リスクを予防するためにGM作物の栽培のモラトリアムを維持する」という約束を守る、そのような目的に持続的に適合できる規制の枠組みを創出する、決定は2014年の4月から6月の播種期の前になされようとしていた(フランス行政最高裁 GMトウモロコシ・MON810栽培モラトリアムは取り消せ 政府は堅持の構え,13.8.1)。

 こうして2月はじめ、アベイロン選出の社会党上院議員が政府との合意の上に、GMトウモロコシ(現在EUレベルで栽培が許可さているのはMON810だけであるが、今月12日のEU27ヵ国の投票では許可とも不許可とも決定できず、最終決定が欧州委員会に委ねられたデュポン・パイオニアのTC1507も近々加わるかもしれない)栽培禁止法案を上程した。ところが上院はその受理を拒否してしまった。社会党が多数を占める下院での採択の道は残されているが、採択は地方選挙に関連した議会休会後の4月になってしまう。

 ミディ・ピレネーやアキテーヌの農業経営者連盟(FNSEA)に後押しされたトウモロコシ生産者は、禁止法案が通る前にと播種を待ち構えている。そこで、省令による取りあえずの禁止という非常手段に訴えたわけだ。ただ、これもコンセイユ・デタに蹴とばされる恐れがある。

 GM作物栽培をめぐるフランスの攻防は、まさに正念場にさしかかっているわけだ。