BRING ME TO LIFE
第二部第ニ章・黒い思惑
(3)
まったくもって愚かな連中だ。
何十年、何世紀経とうとも、何も変わりはしない。
遺伝子を操作した? 自然のままに生まれた? …だからどうした。進歩のない停滞した思想の、破壊を繰り返す生き物の、
なにが進化だというのだろう。何をもって偉大だと言うのだろう。
何を根拠に、己こそが優良で優秀な種であるのだと、声高に叫ぶのだろう。
何台も並んだモニターに映る、様々な人間の顔。その中にはナチュラルもコーディネイターも混じっているが、仮面越しに彼らを見る
男には、皆同じ愚かな生き物にしか見えなかった。
「貴様ら、最初からこれを計算して『K-2』を捕らえたのではあるまいな! あれは元々、こちらで身柄を預ることになっていたのだぞ!
我らが引き取り所有するのが筋だ!!」
「フン、とんだ言い掛かりを。そもそも連合軍に『K-2』の身柄を預ける契約は、Kシリーズが失敗作であるという前提の元での話の筈。
成功していたとなればその前提がなかったことになるのだから、貴殿らの我侭など通らぬ。筋というのなら、彼女のことはこのままザフト
で捕虜として扱うことこそ筋であろう」
「我侭は貴様らのほうが先ではないか!! 忘れたとは言わせん、『ゼロ』を盗んでKシリーズを失敗作にしたのは、そもそもお前達
プラントなのだぞ!!」
「過激派のテロだなどと弁解していたが、実は議会が手を回していたんじゃないのかね!?」
「何!? 我らを侮辱する気か! 第一、仮に我ら議員の誰かから指示があったとして、あのような無差別破壊兵器がナチュラルの手に
渡れば我々の存亡に関わるのだから、それを阻止すべく行動するのは当然であろう! 貴殿らの方が情報を先に掴んでいたとしたら、
貴殿らも研究を妨害していた筈だ。違うか!?」
「少しお待ちなさい。先ほどから聞いていれば、あなたがたは彼女を兵器としてしか扱う気はないようですな。忘れておられるようだが、
彼女は人間だ。自分の意志と心を持った、人間なのですぞ」
「天空から紫紺の雷を放ち、一瞬で戦場の勝敗を決める化け物が、人間かね」
「この際本人の意思など汲んでいる場合ではない! あれにはこの戦争の命運を決める力がある!! 我々コーディネイターの未来が、
いや、存亡が掛かっているのだ!」
「あなたがたはまだそのようなことを!」
「まァまァまァ。ちょっと落ち付いて下さい、皆さん」
人を食ったような調子で宥めるフリをして、話に割りこんで来る金髪の男。
「確かに『K-2』が成功していたのは、こちらの誤算、確認ミスです。ですが、だからこそ一度我々の管理下に戻すべきでしょう」
「な…っ」
「都合のいいことを!! 十数年前には我々に押し付けてきた貴公が、今更成功していたからといってそれを言うのかね!」
「そりゃ、失敗作と成功体とでは、全く価値が違いますから」
眉をハの字にして、ひょいと肩を竦める。
「改めて、あなたがたの中のどなたにご提供するか、その価格も含めて、きちんと性能を調査する必要がありますので。Kシリーズは
一旦エルクラークで回収させて貰いますよ。あ、勿論完成体だけでなく、他のKナンバーも同様ですが」
「……くっ…、どこまでも勝手なことを!」
「ご不満なら今後、エルクラーク関係の軍事商品は一切取引停止、ということでも構わないンですよ? ウチには他にも、身を立てる
事業は山ほどあるンですから」
「…っ……!!」
これをちらつかされるから、地球連合側もプラント側も、最後まで押し切れないのだ。
エルクラーク関係商品の取引停止。エルクラーク財団の擁する企業、関連団体の商品が手に入らなくなれば、真っ先に不足し始めるのは、
MAやMS、そして銃器兵器や弾薬の類。戦時中においてこれは致命的だ。
モルゲンレーテとエルクラーク傘下の軍事企業が供給する純正品は、地球軍に対し実に八割以上の強いシェアを誇っている。ザフトに
供給されている兵器類を製造しているプラントの工場も、そのトップを手繰っていけばエルクラークに辿りつくところが圧倒的過半数。
これが、パトリック・ザラでさえエルクラークからの圧力を容易に払い除けられない理由だ。
「………全くもって、命の尊厳と個人の意志を無視した議論ですな。これは」
静かに、落ちついた理知的な声が、静まった通信回線に響く。
その介入への不快感を隠さず、金髪の男が左から二つ目のモニターをチラリと見た。先程一同をなだめた初老の男が、厳しい表情の
男性にその席を譲っている。
オーブの前代表、ウズミ・ナラ・アスハ。
きゃんきゃん喚く連中を黙らせることは簡単だ。だが、この頑固な狸親父には、十二分に警戒する必要がある。
オーブにはモルゲンレーテがある。そしてモルゲンレーテはエルクラークから出資しており事実上子会社であるとはいえ、表向きは
オーブ国営企業。情報操作に有利だとか、中立国の中であれば他所から干渉されにくいといった利はあったが、現在モルゲンレーテ内部
からはエルクラークからの独立を提案する声もあり、オーブ側からの実質出資額が少しずつ増加してきている。
この状況で、オーブが…このウズミ・ナラ・アスハが相手となるのならば、さすがのアズラエルも慎重に舌戦の行方を見定めなければ
ならない。
更に彼は『K-1』の保護者でもある。
発言の影響力は、大きい。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
………辻褄合わないところが出てきたら後から修正させて下さい…。
多分…大丈夫…なはず……。
ていうか修正前提ってだめじゃんサイテーあたし……。………凹………。
…申し訳ありません。海原のヘボ脳味噌回路、オーバーヒートしてます…。