++「fate」(11)++

fate

(11)







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 今日はアスランがいてくれるって言ってるから、カリィさんはゆっくり休んで。
 そう告げたキラの頬が僅かに赤く染まっていることを、彼女は見逃さなかった。

「…ま、やぼな詮索はやめときますか」

 そう呟いて、彼女はベッドに入った。


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 どちらからともなく、抱き締めて。
 どちらからともなく、唇を重ねて。
 触れ合う肌。
 伝え合うぬくもり。

 その行為に没頭するのではなく。
 愛しい相手の体温を感じながら、語り合う。さまざまなことを。

「…一生、世界を見続けるのか、キラ」
「ううん。…講和条約とか、和平会談とかが上手く行って、しばらくしたら…ウズミ様に返そうと思ってる。僕が一生独占していいもの でもないと思うから」
「そうか。…その時は、目…治すんだろ?」
「治すっていうか、結構無茶苦茶しちゃったから、義眼が入れられる状態に戻るかどうかだよね」
「…」
「そのへんはまた、アルヴァニスタで先生と相談してみないと。…どちらにしろ、まだそれまでは、ずっと世界を見つづけるよ」
「………そうか」
「うん。まだアズラエルの…ブルーコスモスの残党や、プラント急進派の一部の人達が、和平交渉を妨害しようと狙っているからね」
「そうだな。………でも」
「え?」
 すっ、とバイザーの無線端末に手を添えるアスラン。
「…今夜くらい、一休みしないか」
「え、でも…」
「大丈夫。エターナルとクサナギから、ラクスとカガリが眼を光らせてくれてるから」
「…でも」
「キラ、ヴェルトールに繋がってから、それこそ眠っている時でも繋がりっぱなしだっただろ? 何かあったらすぐ起きられるように、 何かあったらすぐヴェルトールの制御ルームに飛び込めるように」
「だから、それは僕が」
「選んだ道にしても。………そろそろ一度、ちゃんと休憩とらないと」
「…アスラン…」
「まだあと何ヶ月もこの生活続けるつもりなら、尚更休息も必要だ。ラクスとカガリもそう言ってた」
「え…………」
「……イジェクトするよ、キラ」
「………」
 いいのだろうかと迷うキラに、そっと口付けをおとして。

 やっとアクセスランプが消えたのを確認してから、アスランはそのプラグをそっと引き抜いた。



「どのくらいかかるのかな……本当に平和になるまで」
「ヴェルトールでシミュレーションしたんだろ?」
「そうだけど…いろんな情報ですぐに計算が塗り替えられてしまうから、一定しないんだ」
「…そうか」
「……」

 ぎゅっ、とキラを抱き締めるアスラン。

 心臓の音が重なってゆく。

 そっとアスランの背中に腕を回すキラ。

 体温がとけ合ってゆく。

「大丈夫だよ。きっと、俺達は掴める。新しい時代を」
「………うん。ただの僕の我侭かもしれないけど、でも、やっぱり…コーディネイターもナチュラルも、みんながお互いに認め合える日が 来て欲しい」
「…ああ」
「そして、憎しみの連鎖を断ち切りたい。…僕らは人間だから…どうしても過ちは犯してしまうけど。でも、こんな大きな鎖はもう、 生み出さないように。…そんな世界であってほしい」
「俺も、そう思う。キラの思い描く世界を見てみたい。…そのなかで、お前と一緒に生きていきたい」
「…アスラン…」
 クス、と優しく微笑んで。
 あたたかな口付けを与えて、頬を寄せる。




 擦れ違って、ぶつかりあって、取り戻せない過ちも犯したけれど。
 赦し合って、乗り越えてゆける。


 なぜなら、君を愛しているから。


 言葉で確認したりはしないけれど。
 君の想いを感じるから。
 この想いが伝わっていると感じられるから。

 信じられる。
 君との未来を。


 まだ心に残る傷が、時々いたみを訴えるけど。
 君から受けた傷を思い出して苦しむこともあるけれど。
 君に刻んだ傷口を見つけて、自分を責める日もあるけれど。

 でも。

 この愛はゆるがないから。




 だから、二人で築いてゆこう。

 幼い日に君と描いた未来を、現実に引き寄せよう。
 支え合って、離れず生きてゆこう。


 ―――――――――二人で。







THE END



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