tune the rainbow
第二章・明かされる秘密、出揃う役者
(2)
イザークに銃を突き付けられたディアッカだが、そんな状況でも、あくまで穏やかに冷静に、話し合いを続ける。
何より、イザークに自分が撃てないことくらい、彼はよく承知していた。
「ラクス・クライン…バルトフェルド隊長…それにアスランもか…!!」
「ああ」
「何故だ!? …百歩譲って…ザラ議長と袂を分かったところまでは納得してやる。地球軍に滅ぼされたオーブの生き残りと合流するのも
いいだろう! だが!! …なぜそこに足付きなんだ!!」
「…知ってるだろ? アラスカで何があったのか」
「ストライクはニコルの仇だ!!」
キッと視線を強めるイザーク。
…ニコル。
どんなに臆病者と詰っても、軍服など不似合いだと嘲っても、それでも自分も何かしようと戦い続けた、優しい年下の同僚。
忘れたわけではない。決して。
……だが。
「…殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は本当に平和になるのか?」
「何?」
冷静に意外な言葉を返されて、イザークは一瞬眉間にシワを寄せてしまう。
「ニコルを殺したストライクのパイロット、あいつ、アスランのガキの頃からの親友だったんだ」
「…なっ」
脳裏に蘇る、あの時のアスラン。
『……ストライクは討ったさ』
どこか呆然とした、覇気のない表情。
代償としてイージスを失い、自分も怪我を負って、そこまで苦戦させられた故の悔しさがそうさせているのだと思っていた。
結果ストライクを討ったのだから誇っていいのだ、よくやった、と彼の後姿を見送ったけれど。
あのアスランの表情は、そうじゃなかったのか。
「親友にニコルを殺されて、だから親友を殺して。…まあ、結果キラは生きてたけどな」
「何?」
「元々ストライクに乗ってた…オレ達が戦ってきたパイロットは、今フリーダムに乗ってる。あいつもコーディネイターだ」
「な…んだと!?」
「…アラスカで助けられたんだってな」
「っ!!」
唖然としていた表情を改め、銃を構え直す。
「…親友と殺し合って。親友の友達殺して。それでも何も終わらなかった」
「この戦争に勝てば、全て終わる!!」
「ナチュラルは全部ブッ殺して、か?」
「っ、……」
そうだ、とは叫べなかった。
何故だかはわからないが、そう反論しようとした瞬間、自分の中の何かがブレーキをかけた。
そんな自分がわからず、また苛立つ。
そこへ。
『ディアッカ! …イザーク!!』
「! アスラン!? 来たのか!」
ディアッカのパイロットスーツの腕の部分にある通信機から、アスランの声が飛び出す。
ほぼ同時に姿を現した、真紅の機体。正義の名を冠する、現在のアスランの愛機。
「…アスランか!!」
くっと喉を鳴らしたイザークは、その燃えるような色の機体をキッと見据える。
「イザークはオレにまかせろ! キラとおっさんはそっちの建物の中だ! …クルーゼ隊長を追ってな!」
『!!』
アスランが息を飲むのが分かった。
バスターの少し後ろへ降り立ち、アスランが銃を手に降りてくる。
「……イザーク」
「アスランっ、貴様!!」
「やめろ!」
銃の照準をディアッカからアスランへと移したイザーク。だが、その前にディアッカが立ちはだかった。
「早く行けよ、アスラン!」
「…わかった。俺とキラみたいなことにはなるなよ」
「それ、キラにも言われたっつーの」
ふ、と複雑な微笑を落として、アスランは示された建物へと走り出す。
「……っ」
わなわなと銃を握る手が震える。
「…イザーク」
そんな彼にそっと歩み寄るが、ハッと気付いた彼は再びディアッカに照準を合わせた。
「…もうやめようぜ、イザーク」
「それはこっちのセリフだっ!! 目を醒ませ! 騙されてるんだ!! アスラン達も、お前も!!」
「そりゃ、お互いさまだろ」
「何!?」
「オレ達みぃんな騙されて、踊らされてんのさ。戦争っていう、誰かが作った大舞台の上でな」
「な…っ、わけのわからんことを!!」
混乱しているイザークに、さらに歩み寄る。銃を向けられていることも構わずに。
「動くなっ!!」
「イザーク」
「煩い!!」
「オレはお前の敵か?」
「黙れ!!!」
すっ、と。
自然な動作で、ディアッカはイザークの銃を握った。
もう片方の手を伸ばし、抱き寄せようとした瞬間。
『……』
「?」
一瞬のノイズと、何かが派手に崩れ、硝子が割れるような破壊音が立て続けに飛びこんでくる。
音源は、イザークの腕。
通信機のスイッチが勝手に入ったのだ。しかも、受信オンリーになっている。
『…ハハ!!! どうやらそのようだな』
「っ、隊長!?」
受信オンリーとわかってはいても、自然とイザークの声は通信機に向けられてしまう。
破壊音がおさまって聞こえたのは、普段の彼からは想像もつかないほど感情的な、クルーゼの嘲笑。
『人は理解できぬこと、理解したくないことに直面した時、暴力に訴えて気を晴らそうとする。今のお前が丁度そうじゃないか。そして
その延長がこの戦争だ!! お前がどんなに戦争を終わらせようとしても、同じ事をしているお前にできるはずもない』
『あぁ!? ヘリクツ言ってんじゃねぇ!!』
『フン! …さて、どうだね。自分の正体を知った気分は! キラ・ヤマト君……いや、キラ・ヒビキ君と呼んだほうがいいかね!?』
「キラ…!?」
眉間にシワを寄せて呟いたのは、ディアッカ。
そんな彼の様子に、イザークは更に苛立つ。
『私が君を「完璧なコーディネイター」と評した意味…わかってもらえたかね』
『ふざけんな!! どういうつもりか知らないが、手の込んだ細工しやがって!!』
『ほう? お前は認めんというのか、ムウ。だが残念ながら、その記録は全て真実なのだよ。私と貴様のこともな!!!』
『っ、……まさか……嘘だろ………』
『あの男がやりそうな事だ。お前が一番よくわかるだろう…』
『…この…記録の、ラウ・ル・フラガは…本当に、貴様なのか…』
『ククク…まだ思い出さないか。私とお前が、幼い日に会った時のことを。それさえ覚えていれば、すぐに納得するだろうに』
「…何なんだ…一体何の話しをしてるんだっ!?」
イザークの憤りは、虚しく虚空へ消えるだけだった。
二人はしばし、対立していた事も忘れて、この通信に聞き入ってしまう。
受信を止めようという発想は、どちらにも浮かばなかった。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
…要するに盗み聞き決定と。
コラコラ、って感じですが。
とりあえず、ここでのイザークとディアッカにはもっと掘り下げて話し合って欲しかったなぁと思っていたので、…ていうか要するに
イザークにこっち陣営に早く来て! と思っていたので(笑)
OPのキラの隣…絶対イザークが来ると思ってたのに…結局最終回のOPにも…(涙)
ここでイザークがアスランと会っていたらどうなっただろう、とも思ったので会わせてみたんですが…アスランはすぐキラんとこ
行っちゃいました。