雪の舞う夢を、君に
(5)
うなされているキラを見ているのは辛いものがあった。
ニコルはそっと汗を拭き、もう一度肩に手を添える。
「…キラ。キラ、起きて下さい」
「……ん………や…だ、ママ…パパっ………」
「キラ! キラ!」
「…マ………カガ……………」
きつく目をつむって、時折うわ言をこぼすと、また深く眠ってしまう。
だが、その間も表情はどこか哀しげで。
このまま少しでも休ませてあげたほうがいいのか、魘されるくらいなら無理矢理にでも起こしたほうがいいのか。
判断がつかないまま、ニコルはそっとキラの手を握った。
「……………」
不意に、空気が揺れる。
ついうとうととしていたニコルが敏感にその気配を察し、はっと顔を上げた。
「キラ! 気が付きましたか?」
ぼんやりと目を開けたキラの顔を覗き込む。
状況がわかっていないのか、ぼんやりとした目は焦点が合っていないようだ。
「………あ」
しばらくぼうっとしていたキラだが、ようやくニコルの存在を認識する。
「…ニコル……………」
「大丈夫ですか? キラ」
「…………… っ!!」
「!?」
ばっ、と突然飛び起きるキラに驚いてしまうニコルだが。
「ぶっ、無事!? ニコルっ、ディアッカもっっ」
「えっ?」
「え!? ………あ…っ……、えと…」
驚いたニコルにキラも驚いて、奇妙な間が。
やがてほっと息をついて、キラが情けなさそうに笑った。
「…そっか。演習だったんだっけ、あれ。ごめん、大騒ぎしちゃって」
「いいえ。…本気で心配してくれたんですね、キラ」
申し訳なさそうに微笑むニコルに、キラは頭を軽く横に振った。
「ううん、僕………あ」
頭を振った拍子にグラッと視界が回って、上体が揺れる。
そんな彼を受け止めて、ベッドへ横にしてやる。
「まだ横になってたほうがいいですよ、キラ」
「…ごめん…。情けないね、僕」
「そんなこと言わないで下さい。…騙すような真似をした僕達のほうこそ、責められるべきなのに」
「責める…って、そんな」
「キラ、喉乾いてませんか?」
唐突に変えられた話題に、え、と口をぱっくり開いてしまう。
にこっと微笑んだニコルは、ベッドサイドにあったコップからミネラルウォーターを口に含み、ぱっくりと開いているキラの口に、
自分の唇を重ねた。
「………」
何事が起こったか認識できずにぽかんとしているキラの肩を抱き締め、頭を手で固定して、ゆっくりと含んだ水をキラに移していくニコル。
呆然としたまま、ほぼ反射的にその水を飲み込んでいくキラ。
シュン、と扉の開く音がしたが、ニコルは完全無視。キラはその音でハッと気付いてもがくが、しっかり抱き締められている状態では、
ほんとうにもがいているだけで。
入ってきたアスラン、イザーク、ディアッカの三人が固まったことはいうまでもない。
「いいじゃないですか。アスランなんて同室なんだから、もっといろんなことしてるんじゃないんですか? 僕達に内緒で」
倒れたキラの手前、なんとか怒鳴ろうとして吸いこんだ息を止めるアスランとイザーク。ディアッカはそれをそのまま溜息に変えた。
冷静に何事かと尋ねたアスランに、ニコルはしれっとそう答えた。勿論、キラには聞こえない音量で。
「………」
咄嗟に言い返せず沈黙したアスランが、今度は全員から睨みつけられるはめに陥ってしまう。
さりげなく自分に向けられた矛先をアスランに流したニコルは、手際良くキラの世話を続けて。その間、アスラン、イザーク、
ディアッカの三人が部屋の隅で一悶着。
ディセンベルナインでの休暇の話しが出るのは、まだもう少し先になりそうな勢いだ。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい
大変お待たせしております、申し訳ございません…m(_ _;)m
次回は雪国リゾートではっちゃける(笑)五人をお楽しみ頂く予定です。