++「雪の舞う夢を、君に」6++

雪の舞う夢を、君に
(6)








「う…わあ………!!!」
 一面白銀の雪景色。

「キラは雪を見るのは初めてだったっけ」
「うん! あ、アスランはボード?」
 本当はキラと一緒にスキーにしたかったんだけど、と囁くと、キラはふふっと笑った。

 よかった。キラが笑ってる。

 …とほのぼのする間もなく。
「アスラーンっっ!! 勝負だ!!」
「キラ、お待たせしました」
 イザークとディアッカがボードで、ニコルがスキーで二人のところへやってきた。
「あっ、ニコルはスキーなんだね。良かった、僕一人かと思っちゃった」
「キラはソリのほうが可愛いのになァ」
「ディアッカ、それ子供扱いしすぎだよ」
 ぷーっと頬を膨らませるキラにクスクス笑うディアッカとニコル。
 だが、ディアッカはすぐイザークに腕を引かれた。
「うわっ、ちょっ、危ねえっ!」
「煩い! さっさとゴール地点に行け!」
「はァ??」
「はあじゃない! 審判だ! オレとアスランのどっちが先にゴールするか、ちゃんと見てろ!!」
「…なんでオレが…」
 キラと一緒に滑る気まんまんだったディアッカはげそっと肩を落とし、アスランはやれやれとばかりに溜息。今度こそアスランに勝って やると息巻くイザークだけが高いテンションを維持していた。
「ニコル、キラを頼んだぞ。この勝負に勝ってから、オレもすぐ行くからな」
「ええ、わかりました。何なら、夕方までずっと連戦しても構いませんよ」
「それじゃキラはずっとお前と一緒だろうが!! 一本勝負だ、いいなアスラン!!」
「わかったわかった」
「真面目にやれぇぇーっ!!」
 投げやりに手を振るアスランに、イザークが食って掛かって。
 そんな二人のやりとりに、キラとニコルが笑う。
「二人共、頑張ってね!」
「ああ。気をつけるんだぞ、キラ」
「…あのねえ…。僕もう子供じゃないよ、アスラン」
「でもスキーは初めてだろ?」
「大丈夫、キラは飲みこみもいいし運動神経もいいから、すぐに僕より上手くなりますよ」
 にっこり笑ったニコルが、キラの袖をくいっくいっと引っ張って初級者コースへと注意を向けさせる。
「さ、行きましょう」
「あ、うん。アスラン、イザーク、ディアッカ、後でね!」
「ああ」
「気を付けろよ〜、そう見えてニコルって結構鬼コーチだからな」
「ヘンなこと言わないで下さいディアッカ、ちゃんと相手は選んでますよ」
 微妙な一言を残して、二人は初級者コースへ。


「…ディアッカ! ゴール地点に行っていろと言っただろうが! さっさと行け!」
「って、お前ねぇ。オレがなんのためにわざわざこんな休暇とったかわかってんの? アスランに勝負ふっかけてる場合じゃないだろ」
「まったくだ。俺だって、キラの側についててやりたいのに」
 フン、と短い溜息をついて呆れるイザーク。
「そんなに露骨に寄ってたかって心配してたら、逆にキラが気を使うだろうが」
「え?」
「いつも通りにしてたほうが、逆にキラには負担にならない。オレ達に心配させたとか、気を使わせてるとか、それこそ、この休暇は自分 のために取ったんじゃないかとか。…そういう余計なことを忘れて、夢中になれるだろう」
 思わず顔を見合わせてしまう二人。
 そんな二人に、ムカッと端整な顔を歪める。
「ただでさえ露骨にキラに気を使ってるってことが見え見えなんだぞ!! 逆にあいつに気を使わせ」
「はいはい、わ〜かったわかったって」
 吼えるイザークに、ディアッカがストップをかける。
「お前の言いたいことはわかったから。そんじゃ、さっさと決着つけてキラんとこ行こうぜ」
「…そうだな」
「おいアスラン、それはそれとして勝負は勝負、真剣勝負だからな。わかったか!!」
「わかってる」
 なんだかんだで負けず嫌いなアスランも、真剣な表情でイザークに頷いて見せて、上級者コースへのリフトに乗る。
「ディアッカ、ゴールにいろよ!」
「はいはい」
 ひらひらと手を振って、別々のリフトに乗る二人を見送る。

「…三人乗りのリフトでわざわざ別に行くんだもんなァ…。っとにあいつら、お子様なんだから」
 やれやれと零して、言われたとおりにゴール地点へと滑り出す。




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UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい

 お待たせしていて申し訳ありません…って前もこんな書き出しだったな(汗)
 しかも雪って…なんだかタイムリーな話になってしまいました。
 リクエスト頂いたのは夏だったのに………あ痛っ(>_<;)
 …春になるまでには、ハッピーエンドを迎えたいです。スパン長くてすみません…。