※このページは 『ツユクサ科の新しい外来種の発見』の続きです。左のページの後にこちらをお読み下さい。
ホウライツユクサと
外来種のヤハタタチツユクサ(Commelina undulata R.Brown(コメリナ・ウンドゥラータ))が花を咲かせましたので両種を比較してみました。 (図1・2)
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図1 ホウライツユクサ Commelina auriculata |
図2 ヤハタタチツユクサとホウライツユクサ |
1.花のようす
花は外来種のヤハタタチツユクサはやや大きくて淡い藤色で、花弁の形がはっきりとわかります。 ホウライツユクサの花はやや小さく、淡い青色をしています。 ホウライツユクサの花弁は重なるような感じです。 (図3・4)
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図3 Commelina undulata 横径は2〜2.5cm |
図4 ホウライツユクサ 横径は2cm |
花を比べて目立つ部分は、O字形雄しべです。 本種のO字形雄しべは花糸が、大きく湾曲しています。 独特な形です。 (図5) 一方、ホウライツユクサでは花糸がほぼまっすぐで、大きく湾曲していません。 (図6)
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図5 大きく湾曲するO字形雄しべ (特徴的) |
図6 O字形雄しべはほとんど湾曲しない |
2.全体のようす
ヤハタタチツユクサは立ち上がるように成長します。 葉は幅が狭い卵形で、乾いた感じです。(図7) 一方、ホウライツユクサは這うように成長し、葉は細長く、濃い緑色をしていて光沢があります。 (図8)
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図7 ヤハタタチツユクサ: 立ち上がるように成長 |
図8 ホウライツユクサ: 這うように成長 |
苞は両種とも合着していて毛が生えています。 本種の苞はやや
縦長で、茎の上部に複数の苞をつけどんどん花を咲かせてゆきます。 一方、ホウライツユクサの苞はやや
横長で、茎の上部に苞を1個つけます。 (図9)
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図9 苞の形とつきかたの違い |
葉の付け根をみますと、両種とも茎を抱く部分が耳形になっています。 葉鞘はヤハタタチツユクサでは赤っぽい色で、ホウライツユクサの葉鞘は緑色をしています。(図10・11)
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図10 ヤハタタチツユクサの葉鞘 耳形・赤く色づいている |
図11 ホウライツユクサの葉鞘 耳形・緑色 |
根は、本種では太い根が房状に何本も出ています。 ホウライツユクサも同じように太い根です。(図12)
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図12a 根の比較 ヤハタタチツユクサの根 |
図12b ホウライツユクサの根 |
3.果実と種子
種子は両種とも3個できます。 種子にも明らかな違いがみられます。
ヤハタタチツユクサの種子はまだら模様をしていて、白い翼を持っています。 ホウライツユクサの種子はやや丸みがあり、茶色っぽく翼はありません。 エンブリオテガの位置も両種では違います。 (図13)
また両種とも、果実内に1個の種子が隠れていますが、その包んでいる果実の表面にも違いが見られます。 (図14)
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図13 種子の比較 |
図14 果実内の1個の種子 |
外来種のヤハタタチツユクサでは、1個の種子を包む果実の表皮にイボイボ(突起)がみられます。(図15) 一方、ホウライツユクサの1個の種子を包む果実の表皮は滑らかです。(図16)
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図15 ヤハタタチツユクサ: 果実の表皮に突起 |
図16 ホウライツユクサ: 果実の表皮は滑らか |
4.ホウライツユクサとは異なる新外来種
以上いくつかの点を比較した結果、本種とホウライツユクサとは明らかに別の種であることがわかりました。 このヤハタタチツユクサは、日本には自生していない新しい外来植物(帰化植物)です。
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図17 日本では未記録の新しい外来植物 ヤハタタチツユクサ(Commelina undulata R.Brown) |